不動産売却とは?最低限知っておきたい不動産売却の基礎知識

元弁護士

山内 英一

不動産売却の基礎知識 相続放棄に関するコラム

初めて不動産を売却しようとしている方の多くは、「どのような知識が必要なのか」と不安に思うかもしれません。

この記事を読むことで、

  • 不動産の売却の大まかな流れ
  • 最低限知っておきたい専門用語
  • 不動産売却をトラブルなく進めるためのポイント

を理解することができます。

初めての不動産売却に対する不安を解消できるよう、ぜひ最後までお読みください。

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1. 不動産売却の流れ

    まずは、不動産を売却するときの大まかな流れを知っておきましょう。

    ここでは、最も一般的な売却方法である”不動産を仲介で売却する”ときの流れを、大きく7つのステップに分けて説明します。

    (1)相場を調べる

    まずは、売りたい家の相場を知ることから始めてみましょう。

    SUUMOやホームズなどのサイトで、築年数や最寄駅からの距離などの条件が近い物件を探すことで、大体の売却価格(成約価格)を把握することができるでしょう。

    このように売却価格の相場を調べることで、不動産会社の査定結果の妥当性を判断する基準ができます。

    (2)不動産会社に査定を依頼する

    相場を調べ終わったら、不動産会社に査定を依頼します。

    このとき、一社だけに査定を依頼するのではなく、複数の会社に査定を依頼するのがポイントです。

    なぜなら、不動産会社によっては、得意な地域が偏っていたり、一戸建てやマンションなど得意な家の種類が異なることがあるからです。

    また、不動産会社の中には、仲介として利用してほしいがために、査定価格を高めに算出する会社も存在すると言われています。

    複数の会社に査定を依頼すれば、明らかに高額・低額な査定額が浮き彫りにできたり、平均値をとってより正確な相場を捉えることもできます。

    また、査定金額だけでなく、なぜその査定額となったのかの理由を確認することも重要です。

    不動産会社を決めた後は、半年年以上のやり取りになることもあるため、査定の結果や過程を通じて信頼できる担当者かどうかもチェックしましょう。

    不動産の査定をお願いする際は、物件の所在地や登記簿上の情報などを正確に伝える必要があります。

    たくさんの不動産会社に対して何度も同じ情報を伝えるのは非効率ですから、複数の不動産会社にまとめて無料査定を依頼できる「一括査定サイト」を利用するのがおすすめです。

    簡易査定を依頼すると、早ければ数日以内に返答が来ます。複数の不動産会社から査定額が提示されたら、その金額や根拠を比べます。

    担当者の対応なども含めて比較検討し、信頼できそうな業者に「訪問査定」をお願いしてみましょう。

    ・簡易査定と訪問査定

    一般的な不動産の査定方法には、建物の状態を見ずに査定額を算出する「机上査定(簡易査定)」と、立地条件などの詳細について実物を確認しながら査定額を算出する「訪問査定」の2種類があります。

    訪問査定では、立会いのスケジュール調整やヒヤリングなどが必要となあります。そのため、何社にも訪問査定を依頼するのはあまり現実的ではありません。

    使い方としては、一括査定サイトなどを使って簡易査定を行った上で、信頼できそうな業者をピックアップし、その業者に絞って訪問査定を依頼するという方法が良いでしょう。

    (3)不動産会社と契約を結ぶ

    査定結果を確認したら、信頼できる不動産会社と媒介契約を結びます。

    不動産の媒介契約とは、不動産の売買を成立させるために、売主が不動産会社に仲介を依頼する契約のことです。

    (4)売買活動を依頼

    近隣の物件の相場や査定結果などを踏まえて、売り出し価格を設定します。

    中古の家は値下げ交渉をされることも多いため、相場よりも少し高い金額で売り出すと、希望金額で売れることが多いでしょう。

    売り出し価格が決まったら、いよいよ売却開始です。

    中古の住宅は、売却開始から売れるまで3か月程度かかることが多いでしょう。

    もちろん、物件の立地や状態、売り出し価格によっては、短期間で売れることもあれば、3か月以上かかることもあります。なかなか売れない場合は、金額を少しずつ下げていきます。

    売り出し後は、不動産会社が広告などで売却活動を進めていきます。売主は、購入希望者が現れるまで不動産会社からの連絡を待つことになります。

    (5)条件交渉と売買契約の締結

    購入希望者が現れたら、内見をして家の現状を実際に確認してもらいます。

    購入希望者が、売却価格・支払方法・引き渡しの時期などについて希望があるようなら、交渉を進めていきます。

    もちろん、あくまでも交渉ですので、全ての条件を受け入れてる必要はありません。

    どれくらい交渉に応じてあげるかは、あなたが考える売買代金の最低ラインや、少しでも早く手放したいのかなどの事情によって変わってくるでしょう。

    条件交渉がまとまれば、売買契約を締結します。

    (6)引き渡し

    売買契約締結から1か月~2か月ほどで、買主が売買代金を支払います。

    売主側は、家の鍵や所有権移転に必要となる書類を引き渡します。引き渡し当日には、室内の設備や備品の取り扱いなどを一緒に確認することもあります。

    (7)確定申告・税金の支払い

    不動産を売却したことで利益が発生した場合には、譲渡所得税などの税金が発生することがあります。

    その場合は、確定申告を行います。

    譲渡所得の申告は、資産を譲渡した日の属する年の翌年の2月16日から3月15日の間に行います(No.3102 譲渡所得の申告期限|国税庁HP)。

    税金が減縮される特例などが使える場合もありますので、「難しくてわからない」という方は、税の専門家である税理士に相談するようにしてください。

    2. 不動産売却で覚えておきたい4つの専門用語

      不動産売却を進めるときには、聞きなれない専門用語に戸惑ってしまうこともあるでしょう。ここからは、不動産売却で覚えておきたい4つの専門用語を解説します。

      (1)査定価格

      査定価格とは、売りたい家の周辺の成約価格、築年数、間取りなどの条件や不動産市況などのデータをもとに、不動産会社が不動産を客観的に評価し、3か月程度で成約にいたると見込まれる金額を算出したものです。

      このように、あくまでも担当者が考える「数ヶ月以内に売れるであろう価格」に過ぎません。

      つまり、査定価格と実際の売却価格が一致するとは限らないという点には注意が必要です。当然ながら、査定価格の通りに売れる保証もありません。

      査定価格は、不動産会社によってばらつきが出ることがあります。場合によっては数百万円単位で差が生じることもあるため、複数の業者に査定を依頼するようにしましょう。

      (2)仲介と買取

      不動産の売却方法には、仲介と買取の2つの方法があります。

      仲介は、その名の通り、不動産会社が売主と買主の仲介をしてくれる形式のことです。売主は、不動産会社と媒介契約を結び、不動産会社が不動産の買主を探します。仲介では、不動産会社に支払う「仲介手数料」が発生します。

      一方で、買取は不動産会社が直接家を買い取る方法です。買主を探す必要がないため仲介手数料はかかりません。ただし、不動産会社は買い取った不動産をリフォームするなどして転売して利益を得ることになるため、相場価格の7割程度の売却価格となることもあります。

      ・仲介のメリットとデメリット

      仲介のメリット
      • 仲介のメリット① 買取よりも高価格で売却できる可能性がある
        …不動産が高く売れるタイミングを見極めたり、広告活動により高値で買ってくれる人と出会うチャンスが増えたりすることで、高額での売却が期待できます。
      仲介のデメリット
      • 仲介のデメリット① 短期間では売却が難しい
        …売却までに、買主探しや買主が住宅ローンを組むための審査、契約など、さまざまな手続きを経る必要があります。そのため、買取ほどのスピーディーさはありません。
      • 仲介のデメリット② 契約不適合責任(旧「瑕疵担保責任」)が免責されない
        …不動産会社の買取では免責されることがありますが、仲介の場合は売主が契約不適合責任を負うことになります。
      • 仲介のデメリット③ 内見に対応する手間や時間がかかる
        …購入希望者の内見準備やスケジュール調整、当日の対応などを行う必要があります。
      • 仲介のデメリット④ 周りに知られずに売却するのは難しい
        …広告活動を行って買主を探すため、周囲に知られないままの売却は難しいでしょう。
      • 仲介のデメリット⑤ 仲介手数料がかかる
        …不動産会社の仲介業務に対する報酬として仲介手数料が発生します。仲介手数料は「売買代金の3%+6万円」となるのが一般的です。

      ・買取のメリットとデメリット

      買取のメリット
      • 買取のメリット① 仲介と比べて売却期間が短い
        …買取は不動産業者が買取査定価格を算出し、売主がその価格に応じれば契約が成立します。
      • 買取のメリット② 複数回の内見対応が不要
        …不動産会社が家や室内を確認するだけであり、仲介のときのように室内を整えたり、スケジュールを調整したりする手間は不要です。買主候補の一般の方々に家の中を見られることもありません。
      • 買取のメリット③ 近所に知られず売却できる
        …チラシやウェブサイトに掲載されないため、誰にも知られずに売却できます。
      • 買取のメリット④ 契約の確実性
        …不動産会社による買取であるため、売買契約が解除される可能性はほとんどありません。
      • 買取のメリット⑤ 契約不適合責任(旧「瑕疵担保責任」)は原則不要
        …一般的に、買取では「売却した不動産が契約内容と異なる場合、売主が債務不履行の責任を負わなければならない」といった内容の責任(契約不適合責任)が免責されます。
      • 買取のメリット⑥ リフォームなどが不要
        …買取後に不動産会社がリフォームやメンテナンス、クリーニングを行うことが前提である場合が多く、売主がそれらを行う必要はありません。
      • 買取のメリット⑦ 築古・訳あり物件も売却しやすい
        …築古の物件や訳あり物件なども不動産会社によっては積極的に買い取ってくれます。
      • 買取のメリット⑧ 仲介手数料がかからない
        …仲介がないため、仲介手数料は発生しません。
      買取のデメリット
      • 買取のデメリット① 売却価格が低い
        …買主である不動産会社は、購入した不動産にリノベーションなどの付加価値をつけた上で、自社の利益が出るように販売するのが一般的です。そのため、買取価格は相場価格の7割程度になることもあります。
      • 買取のデメリット② 不動産によっては買取ができない場合もある
        …建物の老朽化が著しく活用が難しい場合などは買い取ってもらえないこともあります。

      (3)媒介契約

      土地や一戸建て、マンションなど不動産の売買を行うとき、売主や買主が、宅地建物取引業者(不動産仲介業社)に仲介してもらう方法が一般的です。仲介を不動産会社に依頼する契約のことを「媒介契約」といいます。

      媒介契約には専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約の3種類があります。

      「専属専任媒介契約」が最も縛りの強い契約で、「一般媒介契約」が最も縛りの弱い契約となります。

      1社のみで積極的に売却活動を依頼したい場合は、専属専任媒介契約か専任媒介契約を選びましょう。

      複数の会社に依頼したい場合には、一般媒介契約を結ぶことをおすすめします。

      専属専任媒介契約専任媒介契約一般媒介契約
      社数1社のみ1社のみ複数可能
      買主を自分で見つけたら不動産会社の仲介が必要仲介無しで販売可能仲介無しで販売可能
      契約期間最長3か月
      ※延長の場合は再契約
      最長3か月
      ※延長の場合は再契約
      規定なし
      ※3か月が一般的
      不動産流通機構への登録契約から5日以内の登録義務契約から7日以内の登録義務登録義務なし
      販売状況の報告7日に1回以上必要14日に1回以上必要規定なし
      各契約の違い

      3. 不動産売却でかかる主な費用と税金

        不動産が売却できたとしても、売買代金がそのまま手元に入るわけではありません。売却にかかる費用や税金が発生するからです。

        ここからは、不動産売却の際に発生する主な費用と税金について解説します。

        (1)印紙税

        印紙税は売買契約書に貼る印紙代のことです。

        なお、2027年(令和9年)3月31日までに作成された売買契約書は、印紙税が軽減されます。

        印紙税の金額は次の表のとおりです。

        不動産の売却価格基本の税率軽減された税率
        50万円を超え100万円以下1,000円500円
        100万円を超え500万円以下2,000円1,000円
        500万円を超え1,000万円以下10,000円5,000円
        1,000万円を超え5,000万円以下20,000円10,000円
        5,000万円を超え1億円以下60,000円30,000円
        印紙税の金額

        参照:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁HP

        (2)登録免許税

        家や土地を売却すると、その不動産の所有者が売主から買主に移ります。

        それに伴い、登記簿上の所有者の名義も変更しなければなりません(所有権移転登記)。

        このときに発生する費用が「登録免許税」です。登録免許税は次の計算式で求められます。

        登録免許税=固定資産税評価額×2%(税率)

        仮に固定資産税評価額が500万円の場合、登録免許税として10万円の費用がかかります。

        固定資産税評価額は、実際の売却価格や市場価格とは異なりますので混同しないようにしましょう。

        固定資産税評価額は「固定資産評価証明書」を市区町村から取得することで確認できます。

        参照:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁HP

        (3)譲渡所得税

        不動産を売却して利益が出た場合には、売却した利益の譲渡所得に税金がかかります。譲渡所得の税率は、家を保有した期間によって異なります。

        所得税住民税合計
        短期譲渡所得(土地や建物の所有期間が5年以下)30%9%39%
        長期譲渡所得(土地や建物の所有期間が5年超)15%5%20%
        譲渡所得の税率

        参照:土地や建物を売ったとき|国税庁HP

        (4)仲介手数料

        仲介手数料は、不動産を仲介で売却できたときに不動産会社に対して支払う手数料です。

        仲介手数料は「売買代金の3%+6万円」となるのが一般的です。

        たとえば、500万円で空き家が売れた場合、21万円の仲介手数料が発生します。

        不動産を業者が直接買い取ってくれるケースでは「仲介手数料」は発生しません。

        取引物件価格(税抜)仲介手数料の上限
        400万円超取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税
        200万円超~400万円以下取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税
        200万円以下取引物件価格(税抜)×5%+消費税
        仲介手数料の上限(速算式)

        参照:宅地建物取引業法

        4. まとめ|まずは一括査定から始めてみよう

          不動産売却をする前に、買主に引き渡すまでの流れを把握しておきましょう。

          また、一般的な査定方法や、仲介と買取の違い、媒介契約の中身についてある程度知っておくと、売却活動をスムーズに進めることができます。

          「何となくイメージが掴めてきた」という方は、無料でできる不動産の一括査定から始めてみてはいかがでしょうか。

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