相続放棄をするメリットとデメリットを簡潔に解説

元弁護士

山内 英一

相続放棄のメリット・デメリット 相続放棄に関するコラム

相続放棄をするメリットは?

2022年の相続放棄の受理件数は年間で26万件以上(参照:令和4年司法統計年報概要版)です。大きなメリットがあるからこそ、こんなにも多くの方が相続放棄を選択しているといえます。では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

1 債務を一切受け継がなくて済む

プラスの財産とマイナスの財産

相続放棄をすることで、遺産を受け継がずに済みます。

特に、相続財産に負債(借金等の金銭支払い債務)がある場合には、それを受け継がなくて良くなるという大きなメリットがあります。

また、相続財産の中に充分な価値のあるものがない場合にも相続放棄は有効です。

2 相続に関する紛争に関わらなくて済む

相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったことになります(民法939条)。

そのため、もし遺族間で相続に関する紛争が起きそうな場合であっても、相続放棄をすれば他の相続人と関わらなくても良いことになります。遺産分割に参加する必要もありません。

3 相続税のことなど考えることが減る

相続財産を受け継ぐと相続税がかかることがあります。相続税に関しては複雑なルールも多く、素人では簡単に理解できないことも多いでしょう。そのような場合、具体的な金額や手続きについては、税の専門家である税理士にアドバイスを求めることになります。

相続放棄をして財産を受け取らなかった場合には、基本的に相続税はかかりません。したがって、相続税について頭を悩ませることも少なくなります。

4 財産を特定の相続人に集中させることができる

例えば、相続人となる3人兄弟のうち2人が相続放棄をすることにより、残りの1人に簡単に相続財産を集中させることができます。

相続放棄をするデメリットは?

メリットだけではなく、デメリットも存在します。事前にしっかりと確認しておきましょう。

1 遺産は手に入れることができない

相続放棄すると、相続財産は一切受け継ぐことはできません。特定の物だけ相続し、その他の物を相続放棄する、といったことはできません。

したがって、亡くなった方(被相続人)にプラスの財産や資産がある場合、それを手に入れる機会を逃すことになります。

もっとも、形見分けなどで経済的な価値が殆ど無いものを受け取ることについては許容されるというのが裁判所の見解です。

2 親族との関係悪化の原因となることがある

親族の誰とも相談せずに、勝手に相続放棄をすることも可能ですが、それが原因となって親族との関係が悪化する可能性があります。

相続放棄をする場合には、連絡がつく他の相続人に対して、「相続放棄をする予定である」旨事前に連絡した方が良いでしょう。

特に、あなたが相続放棄をすることによって後順位者に相続権が移るケースでは、事前に連絡してあげた方が親切です。

3 相続放棄には費用や労力がかかる

相続放棄を行う場合、必要書類の作成・収集を行い、管轄の家庭裁判所に提出する必要があります。また、この手続きは「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」(民法915条1項)に行わなければならず、期限に迫られながら準備することになります。

さらに、戸籍謄本等の収集にかかる費用や、相続放棄の申し立て自体にかかる費用も発生します。

加えて、相続放棄の手続きを弁護士に依頼した場合には、当然ながら弁護士に支払う報酬もかかってきます。

このように、相続放棄をするにしても、それなりの費用や労力がかかることは避けられません。

相続放棄をした方が良い人

これらのメリット・デメリットを踏まえて、どのような人が相続放棄をした方が良いのか、あるいは、しない方が良いのかについて簡潔に説明します。

債務超過の場合は相続放棄が得

被相続人の財産を可能な限り把握した上で、マイナスの財産(借金やローン)が、プラスの財産(現預金や土地建物等)を上回る場合には、相続放棄を検討しましょう。

相続放棄をしなければ、被相続人の負債をあなたが受け継ぎ、借金等の返済を行わなければならないからです。

また、「相続したところで大した財産を得られず、手間と労力ばかりかかってしまいそう・・・」という場合にも、相続放棄を検討しても良いでしょう。実際に、そのような理由で相続放棄をする方も多くいらっしゃいます。

反対に、プラスの財産(現預金や土地建物等)がマイナスの財産(借金やローン)を上回る場合には、相続放棄をせず、そのまま相続した上で借金等の返済を行うことも検討すべきです。

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