相続放棄照会書とは?回答書の書き方や手続きの流れを解説【見本あり】

元弁護士

山内 英一

相続放棄回答書の書き方 相続放棄に関するコラム

相続放棄を自分でやろうとしている方のために、相続放棄の経験が豊富な専門家監修のもと、相続放棄照会書(回答書)の書き方や注意点を詳しく解説します。

1. 相続放棄照会書・回答書とは

相続放棄の手続きの流れ

相続放棄申述書等の必要書類を家庭裁判所に提出すると、家庭裁判所から相続放棄照会書(回答書)が送られてきます。

この時点では、まだ相続放棄は完了しておらず、相続放棄回答書に必要事項を記入して返送しなければなりません。

なお、家庭裁判所によって照会書(回答書)の様式や記載内容は異なります。相続放棄照会書と相続放棄回答書が一体となっていたり、それぞれ分かれていたりすることもありますが、いずれにしても書き方の説明は照会書に記載されていますから、その指示に従って記入していけば問題ありません。

2. 相続放棄照会書・回答書はいつ届く?

相続放棄照会書・回答書が届くのは、相続放棄申述書等の必要書類を家庭裁判所に提出してから約1週間〜2週間後です。

ただし、相続放棄申述書を提出するタイミングや裁判所が抱えている案件の混み具合などによって、届くタイミングが前後することがあります。

「なかなか届かなくて不安」という方は、裁判所に電話をしてみても良いでしょう。案件の進捗状況や発送予定日などを教えてもらえることがあります。

なお、相続放棄の手続きを弁護士に依頼した場合には、照会書(回答書)による意思の確認の過程そのものが省略されることがあります。

3. 相続放棄照会書・回答書の見本

相続放棄照会書(回答書)は、以下のような書面です。

相続放棄照会書(回答書)1
相続放棄照会書(回答書)2

4. 相続放棄照会書(回答書)に記載されている質問事項

上述のとおり、相続放棄照会書(回答書)の形式や内容は各家庭裁判所により異なりますが、質問事項は大きく変わりません。基本的には、次のような質問が記載されています。

よくある質問事項
  • あなたは被相続人の死亡(または先順位者が相続放棄したこと)をいつ知りましたか。
  • 相続放棄申述受理の申立ては、あなた自身でしたものですか。それとも、誰かに手続きを依頼したものですか。
  • あなたは相続人の死亡をどのような経緯で知りましたか。
  • あなたは相続人とどのような身分関係にありましたか。
  • あなたはどうして相続放棄をするのですか。
  • あなたは被相続人の遺産を処分したり消費したり隠してしまったこと(例えば、被相続人名義の土地を売却したり、預金をおろして使ったりしたこと)がありますか。
  • 現在、あなたの名義で、当裁判所に対して相続放棄をしたいという申し込みがされていますが、これはあなたの意思によるものですか。
  • 現在も、あなたは相続放棄をする気持ちに変わりはありませんか。

5. 相続放棄回答書の書き方【記入例あり】

相続放棄回答書の書式は裁判所によって異なることもありますが、基本的にはチェックボックスにチェックを記入する形式となっています。

したがって、書き方のテクニックなどは特段必要ではなく、当てはまるものにチェックをしていけば問題ありません。当然ながら、嘘をついてはいけません

ここからは、各質問の趣旨や回答のポイントについて解説していきます。

(1)被相続人の死亡をいつ知ったか

「被相続人の死亡をいつ知ったか」は、すでに提出済みの申述書にも記載したと思いますので、その通りに回答すれば問題ありません。

なお、被相続人の死亡をいつ知ったかは、相続放棄の期間制限との関係で問題となります。

(2)相続放棄の申述の手続きを誰かに依頼したか

相続放棄の申述の手続きを弁護士や司法書士に依頼している場合は、「弁護士(司法書士)に依頼した」旨記入しましょう。

(3)自分の意思で相続放棄を選択したか

誰かに強制されて相続放棄の手続きを進めていないかの確認です。自分の意思で相続放棄をしている場合には、「自分の意思である」と回答します。

(4)相続放棄をする理由

「相続放棄をする理由」についての回答は、どれを選んでも問題はありません。相続放棄申述書にも「相続放棄をする理由」を記入したと思いますので、基本的には、その時と同じ選択肢を選ぶことになるでしょう。

相続に「関わりたくない」という理由で相続放棄をするケースについては、下記の記事も参考にしてください。

(5)遺産を処分・消費したり、遺産分割協議を行なっていないか

  • これまで、被相続人の財産を処分・消費したことはありますか。
  • 被相続人の遺産について、遺産分割をしましたか。
  • 被相続人の財産を使った、あるいは借金の返済に充てたことがありますか。

といった質問は、「処分」等の行為を行ったことによって法定単純承認が成立していないかを確認する趣旨の質問です。相続放棄前に相続財産を処分するなどして法定単純承認が成立すると、相続放棄ができなくなってしまいます。

つまり、この類の質問に対して、間違えて「処分したことがあります。」「遺産分割をしました。」といった回答をすると、相続放棄が認められない可能性が高くなりますのでご注意ください。

処分行為の具体例などについては下記の記事でご紹介していますのでぜひご覧ください。

(6)署名・押印

記入した内容に間違いがないかを確認し、署名・押印します。印鑑は実印でなくても構いません。

6. 返送先となる家庭裁判所

返送先は、相続放棄の申立ての手続きが係属している家庭裁判所です。

具体的な宛先は相続放棄照会書(回答書)に記入されていると思いますので、確認してください。

7. 返送期限までに普通郵便で返送

相続放棄照会書(回答書)には、返送期限なども記載されていると思いますので、そちらをよく読み、指示に従うようにしてください。普通郵便で返送しても問題ありません。

期限はしっかりと守るようにしましょう。一般的には、2週間程度の返送期限が設けられています。

特別な事情があって期限に遅れてしまいそうな場合は、相続放棄照会書(回答書)に記載されている連絡先に電話をして、事情を説明した方が良いでしょう。

8. 回答書を返送した後の流れ

家庭裁判所に回答書を返送した後の流れは以下のとおりです。

回答書を送ってから10日前後で、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。「相続放棄申述受理通知書」は、相続放棄の申述が受理されたことを示す書面です。この通知書を受領して、相続放棄の手続きは完了となります。

「相続放棄申述受理通知書」は再発行できず、後々必要となる可能性もあるので、捨てずに保管しておきましょう。

なお、債権者に相続放棄の完了を証明したいときや、不動産の相続登記に必要となるときは、「相続放棄申述受理証明書」の発行を家庭裁判所に申請できます。

「相続放棄申述受理通知書」と「相続放棄申述受理証明書」は別物ですので、混同しないように注意してください。

9. よくある質問【専門家が回答】

Q. 回答書は郵送ではなく、裁判所に持ち込んでも良い?

A. 回答書の提出は、家庭裁判所に持参する形でも問題ないでしょう。持参する際は、念のため家庭裁判所に連絡し、対応可能な時間帯や持ち物などを確認しても良いと思います。

Q. 相続放棄照会書・回答書が届かないときはどうする?

A. 照会書・回答書は、相続放棄申述書等の必要書類を家庭裁判所に提出してから1週間〜2週間ほどで届きます。2週間を過ぎても届かない場合には、家庭裁判所に電話して確認してみても良いでしょう。

Q. 照会書や回答書のやりとりが省略されるケースはある?

A. 相続放棄の手続きを弁護士に依頼した場合には、照会書(回答書)による意思の確認の過程そのものが省略されることがあります。

※裁判所によって運用が異なることがあります。

Q. 弁護士や司法書士に依頼したときは回答書は誰が書く?

A. 相続放棄の手続きの代理を弁護士に依頼した場合には、①照会書(回答書)のやりとり自体が省略されるケース、②照会書(回答書)が法律事務所に送付され、弁護士が記入するケース、③照会書(回答書)が本人に送付され、本人が記入するケースなどがあります。どのケースに該当するかは、各裁判所の運用や弁護士との契約内容にもよって異なります。

相続放棄の手続きの代行を司法書士に依頼した場合、基本的に回答書は自分で記入します。ただし、契約内容によっては、回答書の作成の代行も司法書士にお願いできることもあります。

Q. 相続放棄の回答書は代筆可能ですか?

A. 代筆が禁止されているわけではありませんが、回答書は本人の意思を確認する趣旨の書類である以上、できるだけ代筆は避けた方が良いでしょう。なお、照会書には、次のような案内が記載されていることがあります。

「信頼できる人に相談して代筆してもらうことはかまいませんが、署名捺印はあなた自身で行ってください。代筆を頼まれる場合は、被相続人の財産を相続する人及びその配偶者(夫又は妻)ではない方に代筆を依頼してください。」

このような注意書きが記載されている場合には、その指示に従ってください。

Q. 記入に失敗したときはどうすれば良いですか?

A. 記入した内容を訂正をする場合は、修正液は使用せず、二重線で誤字を消しその上に訂正印を押してください。

10. まとめ

この記事では、相続放棄の照会書とは何か、回答書はどのように記入して返送すれば良いのかについて解説しました。

相続に関してわからないことがある場合には、弁護士等の専門家に相談してみましょう。

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