遺留分侵害額請求されたらどうする?対応方法をわかりやすく解説

元弁護士

山内 英一

遺留分侵害額請求されたらどうする 遺留分

相続が発生したあと、「遺留分侵害額請求」を受けることがあります。請求された側は、まずはその内容を正しく理解し、冷静かつ的確に対応することが重要です。

この記事では、遺留分侵害額請求を受けたときの対応方法について、実務経験のある弁護士の視点から解説します。

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1. そもそも遺留分とは

遺留分とは、相続財産のうち、一定の相続人に対して法律上保障されている「最低限の取り分」のことです。

例えば、被相続人が遺言によってすべての財産を特定の相続人や第三者に遺贈した場合でも、遺留分権利者は、遺留分として一定割合の財産を受け取る権利があります。

遺留分を持つ相続人は、被相続人の配偶者、子(または代襲相続人である孫)、直系尊属(親など)に限られます。被相続人の兄弟姉妹や甥姪には遺留分が認められていません。

遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人である場合は相続財産の1/3、それ以外の場合(配偶者・子などがいる場合)は1/2となります。

各相続人の法定相続分に応じて個別の遺留分が算出されます。

2. 遺留分侵害額請求されたときの対応方法

遺留分侵害額請求を受けたときの基本的な考え方は次のとおりです。

(1)請求額が適正であるなら支払いを検討

相手方の請求内容を確認し、遺留分の算出方法や金額が妥当であると判断できる場合は、任意に支払いをするとスムーズに解決します。

特に金額が法定範囲内であり、相手方が遺留分を持つ正当な権利者である場合には、支払うことで不要な争いを回避できるメリットがあります。

支払う際は、領収書や合意書など書面を残し、請求権の消滅を明確にしておくと安心です。

(2)過剰な請求の場合は正しい反論をする

遺留分の金額が過剰である、相続財産の評価に誤りがあるなど、不当な請求にはきちんと反論しましょう。

具体的には、相続財産の評価資料を収集し、正確な遺留分を再計算する必要があります。

反論は冷静かつ客観的な証拠に基づいて行いましょう。感情的なやりとりを避けるためにも、弁護士を通じた交渉が有効です。

(3)無視することは避ける

遺留分請求を放置して無視した場合、相手方が調停や訴訟を起こす可能性があります。

その結果、より不利な立場に追い込まれる可能性もあるため、内容に納得できない場合でも何らかの対応を取ることが重要です。

請求者からの内容証明郵便などを受け取ったら、まずは弁護士に相談し、早期に対応方針を決めましょう。

3. 遺留分侵害額請求されたときに確認するポイント

遺留分侵害額請求を受けた際に確認すべき4つの重要ポイントを解説します。

(1)相手方は本当に遺留分を主張できる人物か?

遺留分を主張できるのは、法定相続人のうち配偶者、子(または代襲相続人)、直系尊属(親など)に限られます。被相続人の兄弟姉妹や甥・姪には遺留分はありません。

そのため、請求してきた相手が本当に遺留分権利者かどうか、相続関係を確認することが第一歩です。

戸籍謄本などを見ながら、相続関係をしっかりと確認してください。

(2)遺留分侵害額請求権が時効にかかっていないか?

遺留分侵害額請求権には時効があります。具体的には、

  • ①遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間 または、
  • ②相続開始の時から10年

を経過すると、請求できなくなります。

被相続人の死亡日や、遺言の開封日、請求された日などをもとに、時効が完成していないか確認しましょう。

(3)相手方が主張する遺留分の算定方法は正しいか?

遺留分の金額を計算するには、被相続人の遺産の評価、生前贈与や遺贈の有無、債務の控除など、多くの過程を正確に理解する必要があります。

相手方が誤った前提で算定している可能性も十分にあるため、必ず自分でも計算を行い、妥当性を精査しましょう。

また、不動産などの評価方法もよく争点となります。なぜなら不動産は、預金などのように客観的な価値が明確でないため、一定の評価額を算出することになりますが、この評価額の違いで遺留分侵害額も増減するからです。

できれば、弁護士等の専門家に確認してもらうと良いでしょう。

(4)相手方が特別受益にあたる生前贈与を受けていないか?

もし請求者が生前に高額な贈与を受けていた場合、それは「特別受益」として考慮され、請求できる遺留分の額が大きく減額される可能性があります。

預金通帳の履歴などをもとに、生前贈与の有無も調査しましょう。

4. 相手方の請求内容を認めたくないときはどうする?

(1)交渉であれば反論を書面で送る

請求者や、請求者の代理人弁護士から内容証明郵便が届いた場合など、相手方が任意の交渉を求めている段階であれば、請求内容に対する自らの主張を書面で提出するとよいでしょう。

主張の根拠や資料を添付し、論理的に説明することが重要です。

この段階で弁護士に依頼すれば、専門的な視点から説得力ある反論をしてもらえます。書面を受け取ったらすぐに弁護士に相談するのが理想的です。

(2)調停を申立てられたら調停の手続きの中で反論する

家庭裁判所に調停を申し立てられた場合、調停委員の前で自分の意見を述べることになります。

当然ながら、法的に意味のある主張を明確に伝え、適切な証拠資料を提出することが求められます。

調停はあくまでも話合いの場であり、柔軟な解決が可能ですが、主張や根拠資料が不十分だと不利な合意を求められる可能性もあるため、しっかりと準備しておく必要があります。

調停においても弁護士が代理人として出席することが可能です。できれば弁護士に相談・依頼した方が良いでしょう。

(3)訴訟を提起されたら準備書面で反論

相手方から訴訟を起こされた場合は、裁判所に対して準備書面を提出し、主張と証拠を明示して争います。

裁判では法律的な主張はもちろん、証拠との整合性が重視されます。

調停と比較するととても厳格な手続きですので、弁護士の関与が不可欠と考えましょう。

(4)弁護士に依頼して適切な反論をしてもらう

遺留分侵害額請求への対応には、法律や過去の裁判例の知識、実務経験、交渉力などが必要です。

請求内容に納得できない場合や、その妥当性を判断できない場合には、早期に弁護士へ相談し、適切な対応を依頼するのが賢明です。

弁護士に依頼すれば、法的に意味のある反論に絞って相手方とやり取りできるため、結果として円滑な解決につながるでしょう。

法的に意味のある反論ができず、相手方の請求が認められてしまえば、最終的には給与や銀行口座にある預貯金、不動産などの財産が差押えられる可能性があります。

5. まとめ|遺留分を請求されたら遺産相続に強い弁護士に相談を

遺留分侵害額請求を受けたとき、正しく対応することがトラブルの拡大を防ぐ鍵となります。

相手方の請求内容を精査し、必要に応じて反論を行いましょう。交渉、調停、訴訟の各段階において、弁護士のサポートが極めて有効です。

相続トラブルに巻き込まれたら、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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