田舎の実家を処分する8つの方法|放置による最悪の事例も紹介

弁護士 有資格者

山内 英一

田舎の実家を処分する方法 不動産の相続

田舎の実家をどうするかは「そのうち考えよう」と先送りされがちですが、空き家になった瞬間からコストとリスクが静かに積み上がっていきます。

本記事では、放置の危険性を整理したうえで、田舎の実家を処分する具体策8つと費用・税金、相続前にできる対策までを実務目線でわかりやすく解説します。

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1. なぜ田舎の実家は早く処分すべき?放置する5つの深刻なリスク

(1)毎年かかり続ける固定資産税・都市計画税等の負担

空き家でも、不動産を所有している限り、原則として固定資産税が毎年課税されます。都市計画税は市街化区域に限られますが、対象地域なら同様に負担が続きます。

放置で増えやすい負担は税金だけではありません。たとえば次のような維持コストが積み上がります。

  • 火災保険(加入を継続する場合)
  • 通水・通電の基本料金(停止していても発生するケースあり)
  • 庭木の剪定・草刈り費用(近隣から苦情が出やすい)
  • 屋根・雨どい・外壁の応急修繕費(破損が進むと高額化)

(2)税金が約6倍に?「特定空家」に指定される危険性

空き家対策特別措置法により、管理不全な空き家は自治体から助言・指導、勧告、命令と段階的に措置を受ける可能性があります。特に問題となるのが「特定空家」等に該当して勧告を受けた場合です。

通常、住宅用地には固定資産税の軽減(いわゆる住宅用地特例)があり、土地の税負担が抑えられています。

しかし、勧告を受けると、この特例が外れることがあり、結果として土地の固定資産税が大幅に上がる(目安として最大で約6倍規模)ケースがあります。

特定空き家等に該当しやすいのは、たとえば以下の状態です。

  • 倒壊の恐れがある、著しく老朽化している
  • 衛生上有害となる恐れ(害虫・悪臭・ゴミ堆積など)
  • 景観を著しく損なっている
  • 適切な管理がされていない(雑草繁茂、破損放置)

「税金が上がる前に最低限の管理をすればいい」と考えがちですが、実際は自治体判断で指導等が進むことがあります。早期に売却・活用・解体などの方針を決めるのが安全です。

(3)建物の倒壊や老朽化で多額の損害賠償責任を負う恐れ

空き家を放置すると、建物の老朽化によって瓦や外壁が落下するなどして、通行人に怪我を負わせたり、隣家に被害を及ぼしたりする可能性があります。

空き家発生による外部不経済の損害額の試算結果(その2)
公益財団法人日本住宅総合センター「 空き家発生による外部不経済の損害額の試算結果(その2)

例えば、家屋の倒壊により隣接家屋が全壊し、家屋の居住者3名が亡くなった場合、損害額は2億円になるという試算が出ています。

また、建物がない山林などについても、自然災害による崖くずれなどが発生した場合には、基本的には土地所有者の費用と責任で土砂を撤去する必要があります。その金額は、数千万円に上ることも考えられるでしょう。

(4)庭の草木や動物で近隣住民とトラブルに

枝が隣地に伸びる、落ち葉が大量に飛ぶ、根が境界を越えて配管を傷めといった事象は、近隣トラブルの原因の典型例です。

また、動物や虫による被害も想定されます。

  • ハクビシン・アライグマ等の侵入、糞尿被害
  • 野良猫の住み着き、鳴き声・臭い
  • スズメバチの巣、害虫発生

(5)不法投棄や放火など犯罪の温床になる可能性

人の出入りがない家は、犯罪の温床になりやすい傾向があります。敷地が道路から見えにくい、夜間に暗い、近隣に人目が少ないといった条件が重なるとリスクは上がります。

起きやすい問題は次のとおりです。

  • 家財や金属類を狙った窃盗・荒らし
  • 不法占拠(勝手に住みつく)や不法侵入
  • ゴミ・粗大ごみの不法投棄
  • 放火・火災(延焼すると近隣へ甚大な被害)

2. 田舎の実家を処分する8つの具体的な方法

方法①:不動産会社に仲介を依頼して買い手を探す

仲介は、市場で買主を探して売却する「王道」の方法です。うまくいけば最も高値が期待できます。田舎でも、駅近・幹線道路沿い・観光地周辺・移住需要のある地域などは買い手が見つかる可能性があります。

進め方の基本は以下のとおりです。

  1. 不動産会社に査定を依頼(できれば複数社)
  2. 媒介契約(一般/専任/専属専任)を選択
  3. 売出価格を決め、広告・内覧対応
  4. 売買契約
  5. 引渡し

一方で、需要が少ない田舎の物件は、仲介ではなかなか売れない、あるいは、そもそも仲介で取り扱ってもらえないことがあります。

また、古い家の場合は、雨漏り・シロアリ・給排水の不具合などが後に発覚し、契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)が問われるリスクも高くなります。

方法②:訳あり物件に強い専門の買取業者に直接売る

買取は、不動産会社(または買取業者)が直接買主になる方法です。最大の利点はスピードと確実性で、仲介より売却価格が下がりやすい代わりに、現状のままでも買い取ってもらうことができます。

田舎の実家で多い「遠方で管理できない」「残置物が多い」「雨漏りしている」といった事情と相性が良い方法です。

買取が向く典型例は次のとおりです。

  • 立地が弱く仲介では長期化しそう
  • 建物が老朽化していて内覧に耐えない
  • 相続人が早期に現金化したい
  • 近隣クレームが出る前に手放したい

注意点として、業者選定は慎重に行うべきです。査定根拠が不透明だったり、契約を急がせたりする業者は避け、必ず複数社の比較おすすめします。

方法③:地域の「空き家バンク」に登録して活用してもらう

空き家バンクは、自治体等が空き家情報を集め、移住希望者や地域で住まいを探す人に紹介する仕組みです。田舎の実家は、一般市場では動かなくても「移住者ニーズ」と合致すれば成約することがあります。

ただし、空き家バンクは万能ではありません。自治体は仲介のプロではないため、契約実務は地元の不動産会社が担う形が多く、長期間成約しないこともよくあります。

方法④:知人や近隣住民へ無償で譲る

売れないなら「無償譲渡」という発想も現実的です。近隣の方が倉庫や家庭菜園用地として欲しがる、親族が住みたいと言うなど、話がまとまれば処分のスピードは上がります。

ただし無償でも契約は重要です。最低限、以下の事項は整理しましょう。

  • 名義変更(所有権移転登記)の手続きと費用負担
  • 境界の扱い(未確定ならトラブル化しやすい)
  • 建物の状態の説明(雨漏り等を告知)
  • 残置物の取り扱い(どちらが処分するか)

また、無償譲渡でも受け取る側に贈与税が課税されることがありますので、税理士や司法書士に一度確認すると安全です。

方法⑤:自治体へ寄付して手放す

「自治体が受け取ってくれれば一番楽」と考える方は多いのですが、実務上、自治体が土地建物の寄付を受けるハードルは高めです。受け取った後の維持管理コストが自治体の負担になるため、公共利用の見込みがない不動産は断られることが一般的です。

方法⑥:更地にして相続土地国庫帰属制度を利用

相続した土地を国に引き取ってもらう制度が「相続土地国庫帰属制度」です。要件を満たせば、管理不能な土地を手放せる可能性があります。

ただし、同制度の対象は「土地」であり、建物があると引き取ってもらえません。実家(建物)が残っている場合は、自己負担で解体して更地にする必要があります。

方法⑦:相続放棄

相続放棄をすれば、原則として実家を含む相続財産の取得を拒否できます。田舎の実家が明らかに負担で、借金などマイナス財産もある場合には有力な選択肢です。期限は原則として「相続開始を知った時から3か月」です。

相続放棄の重要な注意点は以下です。

  • いらない不動産だけを放棄することはできない(預金等も含め相続財産全体を放棄)
  • 3ヶ月の期限を過ぎると原則として相続放棄はできない
  • 相続放棄をしても管理義務が残り得る

また、全員が放棄すると相続人が次順位へ移るため、親族間の調整が必要になることもあります。

相続放棄は強力ですが、誤ると取り返しがつかない手続きでもあります。早めに弁護士へ相談し、財産調査と方針決定を同時並行で進めるのが安全です。

方法⑧:不動産の有料引き取りサービスの利用

不動産の有料引き取りサービス(空き家引き取りサービス)とは、手放したいけど買い手がつかない空き家を、一定の費用を支払うことで専門業者が引き取ってくれるサービスです。

老朽化が進んでいたり、過疎地域にある空き家は、いくら価格を下げても買い手が現れないケースが少なくありません。そのような「負動産」に対し、所有者が費用を支払う形で処分することを可能にしたのが、空き家引き取りサービスです。

3. 田舎の実家の処分にかかる費用と税金の内訳

(1)不動産売却時に発生する仲介手数料や印紙税

不動産会社に仲介を依頼して売れた場合、仲介手数料がかかります。上限は法律で定められており、一般的に「売買価格×3%+6万円+消費税」という計算が目安です。

また、売買契約書には印紙税がかかります(契約金額に応じた税額)。

(2)売却で利益が出た場合に課される譲渡所得税

不動産を売って利益(譲渡所得)が出ると、所得税・住民税(復興特別所得税を含む)が課税されます。計算の基本は以下のとおりです。

譲渡所得 = 売却価格 -(取得費+譲渡費用)

ただし、一定の要件を満たすと居住用財産の特例(3,000万円特別控除など)が使える可能性があります。税金面で迷ったら、売買前に税理士に相談しておくのが安全です。

(3)家の中に残った家財道具の処分費用

田舎の実家の処分で最も現場負担が大きいのが残置物(家財)の処分です。不用品回収業者・遺品整理業者に依頼すれば、その分費用がかかります。

(4)家を解体して更地にする場合の費用相場

解体は、売却を進めるため、あるいは危険家屋対策として有効ですが、まとまった費用が発生します。費用は構造(木造・鉄骨・RC)、延床面積、立地条件(重機が入れるか)、アスベスト有無で大きく変動します。敷地が広くても、前面道路が狭い・傾斜地などで費用が上がることもあります。

一般的な戸建て住宅であっても、解体して更地にするとなれば、300万円〜500万円程度の費用がかかることも珍しくありません。

なお、注意点として、更地にすると住宅用地特例が外れ、翌年度以降の固定資産税が上がる可能性があります。売却の見込みがある時期に合わせて解体する、あるいは「古家付きで売る」かを比較して意思決定するのが重要です。

また、自治体によっては解体にかかる補助金があるため、事前に確認しましょう。

(5)有料引き取りサービスの費用相場

引き取り料は物件の種類や状態によって異なりますが、山林などの土地のみであれば40万円~、空き家であれば50万円〜300万円程度が相場です。

空き家がある場合:解体費用よりも安い金額で、かつ、面倒な手続きを丸投げして不要な不動産を引き取ってもらえる!

山林などの土地の場合:国庫帰属制度よりも安い金額で、かつ、面倒な手続きを丸投げして不要な不動産を引き取ってもらえる!

事業者によって見積もり金額は異なりますので、複数の事業者に見積もりをお願いし、比較検討すると良いでしょう。

不動産の有料引き取りにかかる費用の見積もりに特化したサービス「不動産引取の窓口」を利用すれば、一度の情報入力で複数の業者に見積もり依頼をすることができますよ!

4. 相続が始まる前に!親が元気なうちにできる実家の処分対策

相続が始まってから実家の処分を進めると、名義・遺産分割・共有・感情面の対立などで一気に難易度が上がります。親が元気なうちに「親の意思」で決めておくと、選択肢も広がります。

(1)親自身の意思で実家を売却してもらう

最も確実なのは、親が判断能力のあるうちに、親名義のまま売却してしまうことです。相続後に比べて手続きがシンプルで、相続人全員の同意を集める必要もありません(もちろん家族の合意形成は望ましいですが、法律上の主体は親です)。

生前に売却を進める際は、次のようなポイントを押さえると良いでしょう。

  • 住み替え先(賃貸・施設・子との同居)を先に確保する
  • 売却後の資金の管理方法を決める(生活費・介護費)
  • 残置物の整理を段階的に進める(時間を味方にする)

また、親が高齢の場合、売却手続きの途中で判断能力が低下すると契約が進められなくなるリスクがあります。

必要に応じて、家族信託や任意後見契約など、将来の意思決定を補う制度も検討対象になります。どの制度が適切かは家族状況で変わるため、弁護士・司法書士に早めに相談すると良いでしょう。

(2)リースバックを利用して住みながら現金化する

「家は売りたいが、すぐに引っ越したくない」「住み慣れた家に住み続けたい」という場合に検討されるのがリースバックです。自宅を売却して現金化し、その後は買主(運営会社)と賃貸借契約を結んで家賃を払いながら住み続けます。

リースバックの主なメリットは次のとおりです。

  • 引っ越し不要で資金化できる
  • 固定資産税や修繕負担が軽くなる(契約条件による)
  • 相続時に不動産ではなく現金として分けやすくなる

ただし、次のような注意点もあります。

  • 売却価格が市場価格より低くなりやすい
  • 家賃負担が長期的に重くなる可能性
  • 契約更新や買い戻し条件が厳しいことがある
  • 将来退去を求められるリスク(定期借家等)

いずれにしても、契約条項(賃貸期間、家賃改定、修繕範囲、再売却時の扱い)は必ず精査し、可能なら弁護士にチェックを依頼してください。

5. 田舎の実家の処分に関するよくある質問

Q. 実家の処分はどの専門家(業者)に相談すれば良いですか?

A. 目的別に相談先を切り分けるのが最短ルートです。ワンストップをうたう窓口もありますが、最低限、以下の役割分担を理解しておくと失敗しにくくなります。

  • 市場で高く売りたい、買主を探したい→不動産仲介業者
  • 早く確実に売りたい、現状のまま手放したい→不動産買取業者
  • 相続登記、名義変更、抵当権抹消→司法書士
  • 相続税、譲渡所得税、特例の適用、税の申告の判断→税理士
  • 相続人間の対立、相続放棄、契約トラブル、境界・近隣紛争→弁護士
  • 残置物処分、建物の解体、整地→遺品整理業者/解体業者

Q. 買い手が見つからないボロボロの実家でも処分できますか?

A. 処分できますが、ボロボロの実家は需要が限定されやすいため、いかに損失を少なくするか、という発想が重要です。

  • 仲介での売却を検討
  • ダメなら不動産業者による直接買取を検討
  • 売れないようなら有料引き取りを検討

というように、段階的に検討していくと損失を小さくできるでしょう。

Q. 相続した実家を更地にするメリットとデメリットは何ですか?

A. 相続した実家を更地にするメリットは次のとおりです。

  • 建物の倒壊・落下などの安全面のリスクを下げられる
  • 古家の瑕疵に関するリスク(雨漏り等)を回避できる
  • 土地として買い手が広がる(新築希望者、駐車場等)
  • 管理がしやすくなる(草木は必要だが建物よりはラク)

デメリットは次のとおりです。

  • 高額な解体費用が先に必要
  • 住宅用地特例が外れ、固定資産税が最大約6倍に上がる可能性
  • 解体しても土地が売れるとは限らない
  • 建物にアスベスト等があると追加費用・工期が増える

「売却の道筋(買い手・用途)が見えたら解体」「見えないなら古家付きでの買取・引き取り」といったように、順番を誤らないことが重要です。自治体補助金の有無、解体後の税負担の試算も含めて意思決定しましょう。

6. まとめ

田舎の実家の処分は、放置すればするほど税金・管理費・近隣トラブル・事故責任などのリスクが増え、結果的に高くつく傾向があります。

処分方法は仲介売却だけでなく、買取、空き家バンク、無償譲渡、寄付、国庫帰属、相続放棄、有料引き取りなど多様で、物件の状態や家族状況等に合わせた選択が重要です。

まずは実家の市場価値を無料で査定するなど、できることから始めていきましょう。

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