相続した不動産の名義変更(相続登記)手続きの流れ・必要書類・費用は?

元弁護士

山内 英一

相続した不動産の名義変更(相続登記)手続きの流れ・必要書類・費用 不動産の相続

不動産を相続したら、所有者の名義変更、すなわち「相続登記」が必要です。

手続きを怠ると後々トラブルになるリスクが高まるほか、罰則も用意されていますので、速やかに行う必要があります。

この記事では、相続登記の流れや必要書類、費用などをわかりやすく解説します。

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1. 相続登記とは?

不動産を相続した際には、所有者の名義を被相続人(亡くなった方)から相続人へ変更する「相続登記」が必要です。

相続登記を行うことで、相続人がその不動産を正式に管理・処分できるようになります。

本記事の後半でも触れていますが、2024年4月からは、相続登記が義務化され、怠った場合には10万円以下の過料の対象となるため注意が必要です。

2. 相続登記をするにはまず何をすれば良い?手続きの流れ

では、相続登記はどのように進めれば良いのでしょうか。いきなり相続登記をするのではなく、事前にやっておくべきことがいくつかありますので、順に説明します。

(1)戸籍謄本での相続人を確認

まず、相続が発生したら(ご家族が亡くなられたら)、誰が相続人になるのかを改めて確認するようにしてください。ここを誤解したまま様々な手続きを進めてしまうと、多くの時間や労力、お金を無駄にしてしまうことがあるからです。

相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式を取得して確認するのが基本です。また、相続人全員の現在の戸籍謄本も取得します。これにより、誰が法定相続人かが明確になります。

「そもそも法定相続人のルールってどうなっているんだっけ?」とお困りの方は、下記の記事も合わせてご覧ください。

(2)対象不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得

相続対象となる不動産の正確な情報を把握するために、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得しましょう。

不動産の所在地を管轄する法務局に申請すれば、取得することができます。

登記事項証明書を見ると、これまで家族内で知らされてきた内容と異なる発見があることも珍しくありません。

(3)遺産分割協議書の作成

複数の相続人がいる場合は、誰がどの財産を相続するのか話し合う必要があります。この合意内容を文書にしたものが「遺産分割協議書」です。

全員の署名・押印(実印)が必要で、不動産を特定するための内容や住所氏名を正確に記載する必要があります。

(4)必要書類を揃えて法務局に提出

登記申請には、戸籍類、遺産分割協議書、固定資産評価証明書、相続人の印鑑証明書などが必要です。必要書類をすべて揃えたうえで、法務局に相続登記の申請を行います。

3. 相続登記の必要書類

相続登記に必要な書類は、相続の方法や事情によって異なります。具体的には、①法定相続分に従って相続する場合、②遺産分割協議に従って相続する場合、③遺言書に従って相続する場合の、大きく3つのパターンに分けられます。

(1)法定相続分による相続登記

遺言書も協議もない場合は、法定相続分に基づいて登記します。この場合、

  • 登記申請書
  • 被相続人の除籍謄本や戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
  • 法定相続人の戸籍謄本
  • 法定相続人の住民票
  • 固定資産課税明細書

などが必要です。

(2)遺産分割協議による相続登記

遺産分割協議を経て相続登記を行う場合は、

  • 登記申請書
  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の除籍謄本や戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
  • 法定相続人の戸籍謄本
  • 法定相続人の印鑑証明書
  • 固定資産課税明細書
  • 法定相続人のうち新しく所有者になる人の住民票

などが必要です。ここであらかじめ作成しておいた「遺産分割協議書」が必要になるわけです。

(3)遺言による相続登記(遺贈登記)

遺言書がある場合、登記申請には

  • 登記申請書
  • 遺言書
  • 被相続人の除籍謄本や戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
  • 固定資産課税明細書
  • 新しく所有者になる人の戸籍謄本
  • 新しく所有者になる人の住民票

などが必要です。遺言が自筆証書遺言である場合で、法務局に保管されている場合は、「遺言書情報証明書」が必要です。法務局に保管されていない場合には、家庭裁判所での検認が必要ですので注意しましょう。

※ 相続登記に必要な書類に関する詳しい情報は、「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」など、法務省の最新の案内を確認すると良いでしょう。

4. 相続登記の費用

相続登記にはいくつかの費用がかかります。登録免許税などの実費に加え、専門家に依頼した場合の報酬も考慮する必要があります。

(1)相続登記にかかる実費

相続登記にかかる主な費用として「登録免許税」があります。登録免許税とは、登記を申請するときに国に納める税金のことです。平たく言えば、登記をするときにかかる手数料のようなものと考えれば良いでしょう。

税額は土地や建物の「固定資産税評価額」に税率(1000分の4)をかけて算出します。

登録免許税の計算式
  • 登録免許税=不動産の固定資産税評価額 × 税率0.4%(1000分の4)

例えば、固定資産税評価額が1000万円の土地であれば、登録免許税は4万円となります。

「固定資産税評価額」とは、固定資産税や都市計画税を算出するための基準となる土地や建物の価格のことで、自治体から毎年郵送されてくる固定資産税の納税通知書を見ればわかります。

手元に納税通知書がない方は、固定資産評価証明書を取得することで確認することができます。

「固定資産税評価額」は、不動産の「実勢価格」や「固定資産税課税標準額」とは異なりますので、混同しないようにご注意ください。

加えて、戸籍や住民票の取得費用、郵送費、登記事項証明書の取得費用などに、数千円〜1万円程度かかることを想定しておくと良いでしょう。

(2)司法書士に相続登記を依頼した際の費用

司法書士に依頼する場合の報酬はおおよそ5万円〜10万円程度が相場です。

ただし、不動産の数や所在、相続人の人数、書類の収集有無により金額は変動します。具体的な金額は司法書士事務所に問い合わせて、見積もりを依頼してください。

5. 相続登記は自分でできる?

相続登記は、必要書類を自分で集め、登記申請書を作成できれば自力で可能です。

ただし、戸籍の収集や協議書の作成、登記の記載方法には法律知識が求められるため、難しく感じる方も多いでしょう。

書類不備があると補正が必要になり、二度手間になる場合もあります。大切な不動産だからこそ、より確実に手続きをしたい方や、自身で進めるのに不安がある方は、司法書士等の専門家に依頼した方が良いでしょう。

6. 相続登記は義務。期限内に相続登記しないとどうなる?

令和6年(2024年)4月1日に相続登記を義務化する法律が施行されました。覚えておきたい主な内容は次のとおりです。

  1. 相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
  2. 遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。

上記1と2のいずれについても、正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料の対象となります。

正当な理由とは、例えば、相続人が極めて多数にのぼり戸籍謄本等の資料収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケースなどが想定されます。

7. 相続登記の手続き完了まで期間はどれくらいかかる?

書類がすべて揃っている場合、法務局に申請してから登記完了までは2週間〜1ヶ月が目安です。

ただし、書類不備による補正や混雑具合、郵送による申請ではもう少し時間がかかることもあります。余裕を持ってスケジュールを立てましょう。

8. 相続人のうち誰に名義変更すれば良い?

遺言書がある場合はその内容に従うのが基本です。

遺産分割協議をする場合は、相続人全員の合意により誰か1人にすることも、共有名義にすることも可能です。

管理や売却のしやすさを考えると、共有よりも単独名義の方が望ましいでしょう。

9. 相続登記はどこで手続きする?

不動産の所在地を管轄する法務局で相続登記を行います。

複数の不動産がある場合は、それぞれの法務局に申請するか、一括で申請できる法務局にまとめて提出する方法もあります。窓口持参、郵送、オンライン申請が選べます。

10. 相続登記は誰に相談・依頼すれば良い?

登記の専門家である司法書士が相続登記の代行を行っています。その他の相続の手続き(遺産分割や遺留分に関する依頼)と併せて弁護士に相談するのも有効です。

いずれにしても、自力での手続きに不安がある場合は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

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