甥姪に遺留分はない!代襲相続発生時の注意点を解説

元弁護士

山内 英一

甥姪に遺留分はない 遺留分

遺産相続において、甥や姪には遺留分が認められないという事実は、意外と知られていません。

本記事では、甥姪の遺留分の有無をはじめ、代襲相続の発生時に甥姪が相続人となる条件や注意点について、法律の実務経験を踏まえわかりやすく解説します。

遺産分割や相続トラブルの予防にぜひお役立てください。

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Q. 被相続人の甥姪に遺留分はありますか?

A. 被相続人の甥や姪に遺留分はありません。遺留分とは、被相続人の配偶者、直系卑属(子ども・孫)、直系尊属(父母・祖父母)に対して法律により保障された最小限の遺産の取得割合ですが、甥姪はこの対象外です。

甥姪は法定相続人にはなり得ますが、遺留分権利者ではないため、遺産の一部を強制的に取得することはできません。

1. 遺留分とは【一覧表あり】

遺留分とは、遺言や贈与によっても奪えない、一定の法定相続人に保障された最低限の相続分のことです。遺留分の割合は法定相続分の半分が基本ですが、具体的な割合は相続人の関係性によって異なります。

相続人の
組み合わせ
遺留分の全体割合
(総体的遺留分)
各人の遺留分
(個別的遺留分)
配偶者のみ2分の1配偶者 2分の1
子ども1人のみ2分の1子ども 2分の1
子ども2人2分の1子ども 4分の1
子ども 4分の1
配偶者と
子ども
2分の1配偶者 4分の1
子ども 4分の1
配偶者と
両親
2分の1配偶者 3分の1
父 12分の1
母 12分の1
配偶者と
兄弟姉妹
2分の1配偶者 2分の1
兄弟姉妹 なし
両親のみ3分の1父 6分の1
母 6分の1
兄弟姉妹のみなしなし

自身の遺留分が侵害された場合は遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)によって取り戻すことができます。

2. 遺留分が認められる人

遺留分が認められるのは、「兄弟姉妹以外の相続人」です。つまり、被相続人の「配偶者」「直系卑属(子どもや孫)」「直系尊属(父母や祖父母)」に限られます。

(遺留分の帰属及びその割合)
第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
 (以下省略)

民法1042条

3. 遺留分が認められない人

被相続人の兄弟姉妹や甥姪には遺留分が認められません。また、生前どれだけ被相続人に尽くした人であっても、法定相続人ではない第三者には遺留分はありません。

そのほか、相続欠格、廃除、相続放棄などにより、相続人としての地位を失った人についても、遺留分は認められません。

4. 甥姪に遺留分が認められない理由

民法は、遺留分の対象者を「法定相続人のうち、直系卑属(子など)と直系尊属(親など)、配偶者」に限定しています。

そもそも、被相続人の兄弟姉妹に遺留分が認められていませんから、その代襲相続人である甥姪にも遺留分は認められません。

被相続人の兄弟姉妹に遺留分が認められていないのは、被相続人との関係性が遠く、優先順位が低いため、遺留分を認める必要性がないと考えられているからです。

5. 甥姪に遺留分はないが、法定相続分はある

甥姪は通常、遺留分はありませんが、一定の条件下で法定相続分を得ることがあります。それは代襲相続が発生した場合です。

代襲相続とは、本来の相続人(親である兄弟姉妹など)が死亡している場合に、その子(甥姪)が相続人となる制度です。

代襲相続により甥姪は相続権を得ますが、それでも遺留分は認められていませんので、遺留分の請求はできません。遺留分と法定相続分は、全く異なる概念ですので、混同しないようにご注意ください。

6. 甥姪が相続人になるケースをおさらい

(1)甥・姪が相続人になるのは代襲相続が発生した場合のみ

被相続人の甥姪が相続人になるのは、兄弟姉妹がすでに亡くなっているなど、代襲相続が発生する場合に限られます。

甥姪の代襲相続

通常、甥姪が直接的に相続人となることはありません。

※ 例外として、甥姪が被相続人と養子縁組をしているケースなどが考えられます。

(2)甥・姪が相続人になる条件を整理

条件① :被相続人の子供や孫が相続しない

  • 第一順位の相続人(被相続人の子供や孫)がいないこと

「いない」とは、そもそも存在しない場合のほか、すでに死亡している、全員相続放棄している場合も含みます。

被相続人の子や孫が相続する場合、甥姪は相続人になりません。

条件②: 被相続人の直系尊属(父母や祖父母等)が相続しない

  • 第二順位の相続人(被相続人の父母や祖父母)もいないこと

「いない」とは、すでに死亡している場合のほか、全員相続放棄している場合も含みます。

被相続人の親や祖父母が相続する場合、甥姪は相続人になりません。

条件③ :甥・姪の親が亡くなっている

  • 被相続人の兄弟姉妹(甥姪から見た親)がすでに死亡しているなどの理由(※)で「代襲相続」が発生すること

甥姪が代襲相続人になるためには、兄弟姉妹(甥姪の親)が被相続人より先に亡くなっていることなどを理由として、代襲相続が発生することが必要です。

※本来相続人となる人が「相続欠格者」となったり「廃除」されている場合も代襲相続が発生します。

被相続人の甥や姪が相続人になるのかどうかわからない方は、下記の記事も合わせてご覧ください。甥姪の相続について詳しく解説しています。

(3)甥・姪の法定相続分は?

甥姪の法定相続分は、代襲相続された兄弟姉妹の相続分をそのまま引き継ぎます。

(4)甥・姪が相続人になる場合の注意点

注意点①:甥・姪の子供にまで代襲相続はしない

被相続人の兄弟姉妹については、代襲相続は1回限りで、甥姪のさらに子供にまで代襲相続されることはありません。

注意点②:甥・姪は遺留分侵害額請求できない

繰り返しになりますが、被相続人の甥姪が相続人となった場合でも、甥姪は遺留分権利者ではないため、遺留分侵害額請求はできません

7. まとめ|甥姪に遺留分はない

被相続人の甥姪には、被相続人の遺産に関して最低限の割合を取得する権利はありません。つまり、甥姪には遺留分が認められていません。

一方で、代襲相続が発生した場合に「法定相続人」となることはありますので、両者を混同しないようにご注意ください。

遺産分割で甥姪が関係するケースは、複雑でトラブルも起きやすいため、不明点があれば専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

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