不動産売却のコツと注意点!最低限知っておきたい基礎知識まとめ

元弁護士

山内 英一

不動産売却の基礎知識 相続放棄に関するコラム

初めて不動産を売却しようとしている方の多くは、「何から始めればよいかわからない」「どのような知識が必要なのか」と不安に思うかもしれません。
この記事を読むことで、

  • 不動産の売却の大まかな流れ
  • 最低限知っておきたい知識
  • 不動産売却をトラブルなく進めるためのポイントやコツ

などを網羅的に理解することができます。

初めての不動産売却に対する不安を解消できるよう、ぜひ最後までお読みください。

スポンサーリンク

1. 不動産売却の流れと期間

まずは、不動産を売却するときの大まかな流れを知っておきましょう。

ここでは、最も一般的な売却方法である”不動産を仲介で売却する”ときの流れを、大きく7つのステップに分けて説明します。

(1)相場を調べる

まずは、売りたい家の相場を知ることから始めてみましょう。

SUUMOやホームズなどのサイトで、築年数や最寄駅からの距離などの条件が近い物件を探すことで、大体の売却価格(成約価格)を把握することができるでしょう。

このように売却価格の相場を調べることで、不動産会社の査定結果の妥当性を判断する基準ができます。

(2)不動産会社に査定を依頼する

相場を調べ終わったら、不動産会社に査定を依頼します。

このとき、一社だけに査定を依頼するのではなく、複数の会社に査定を依頼するのがポイントです。

不動産一括査定サイトを使って査定価格を比較している図

なぜなら、不動産会社によっては、得意な地域が偏っていたり、一戸建てやマンションなど得意な家の種類が異なることがあるからです。

また、不動産会社の中には、仲介として利用してほしいがために、査定価格を高めに算出する会社も存在すると言われています。

複数の会社に査定を依頼すれば、明らかに高額・低額な査定額が浮き彫りにできたり、平均値をとってより正確な相場を捉えることもできます。

さらに、査定金額だけでなく、なぜその査定額となったのかの理由を確認することも重要です。

不動産会社を決めた後は、半年以上のやり取りになることもあるため、査定の結果や過程を通じて信頼できる担当者かどうかもチェックしましょう。

不動産の査定をお願いする際は、物件の所在地や登記簿上の情報などを正確に伝える必要があります。

たくさんの不動産会社に対して何度も同じ情報を伝えるのは非効率ですから、複数の不動産会社にまとめて無料査定を依頼できる「一括査定サイト」を利用するのがおすすめです。

簡易査定を依頼すると、早ければ数日以内に返答が来ます。複数の不動産会社から査定額が提示されたら、その金額や根拠を比べてみましょう。

担当者の対応なども含めて比較検討し、信頼できそうな業者に「訪問査定」をお願いしてみましょう。

(3)不動産会社と契約を結ぶ

査定結果を確認したら、信頼できる不動産会社と媒介契約を結びます。

不動産の媒介契約とは、不動産の売買を成立させるために、売主が不動産会社に仲介を依頼する契約のことです。

媒介契約にはいくつか種類があります。各契約の特徴や違いはこの記事の中で後ほど説明します。

(4)売買活動を依頼

近隣の物件の相場や査定結果などを踏まえて、売り出し価格を設定します。

中古の家は値下げ交渉をされることも多いため、相場よりも少し高い金額で売り出すと、希望金額で売れることが多いでしょう。

売り出し価格が決まったら、いよいよ売却開始です。

中古の住宅は、売却開始から売れるまで3か月程度かかることが多いでしょう。

もちろん、物件の立地や状態、売り出し価格によっては、短期間で売れることもあれば、3か月以上かかることもあります。なかなか売れない場合は、金額を少しずつ下げていきます。

売り出し後は、不動産会社が広告などで売却活動を進めていきます。売主は、購入希望者が現れるまで不動産会社からの連絡を待つことになります。

(5)条件交渉と売買契約の締結

購入希望者が現れたら、内見をして家の現状を実際に確認してもらいます。

購入希望者が、売却価格・支払方法・引き渡しの時期などについて希望があるようなら、交渉を進めていきます。

もちろん、あくまでも交渉ですので、全ての条件を受け入れてる必要はありません。

どれくらい交渉に応じてあげるかは、あなたが考える売買代金の最低ラインや、少しでも早く手放したいのかなどの事情によって変わってくるでしょう。

条件交渉がまとまれば、買主と売買契約を締結します。

(6)決済・引渡し

売買契約締結から1か月~2か月ほどで、買主が売買代金を支払います。これを「決済」といいます。

売主側は、家の鍵や所有権移転に必要となる書類を引き渡します。引き渡し当日には、室内の設備や備品の取り扱いなどを一緒に確認することもあります。

(7)確定申告・税金の支払い

不動産を売却したことで利益が発生した場合には、譲渡所得税などの税金が発生することがあります。その場合は、確定申告を行います。

譲渡所得の申告は、資産を譲渡した日の属する年の翌年の2月16日から3月15日の間に行います(No.3102 譲渡所得の申告期限|国税庁HP)。

税金が減縮される特例などが使える場合もありますので、「難しくてわからない」という方は、税の専門家である税理士に相談するようにしてください。

不動産を売るときにかかる諸費用や税金については、この記事の中で後ほど解説します。

2. 不動産の売却方法の選び方

上記の不動産売却の流れは、いわゆる「仲介」による方法を前提に説明しました。しかし、不動産の売却方法には「仲介」以外の方法もありますので、ここで確認しておきましょう。不動産の売却方法は大きく3種類あります。

3つの売却方法
  • 仲介
  • 買取
  • 個人売買

以下、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

(1)仲介

仲介は、その名の通り、不動産会社が売主と買主の仲介をしてくれる形式のことです。売主は、不動産会社と媒介契約を結び、不動産会社が不動産の買主を探します。仲介では、不動産会社に支払う「仲介手数料」が発生します。

・仲介のメリット

仲介のメリット
  • 仲介のメリット① 買取よりも高価格で売却できる可能性がある
    …不動産が高く売れるタイミングを見極めたり、広告活動により高値で買ってくれる人と出会うチャンスが増えたりすることで、高額での売却が期待できます。

・仲介のデメリット

仲介のデメリット
  • 仲介のデメリット① 短期間では売却が難しい
    …売却までに、買主探しや買主が住宅ローンを組むための審査、契約など、さまざまな手続きを経る必要があります。そのため、買取ほどのスピーディーさはありません。
  • 仲介のデメリット② 契約不適合責任(旧「瑕疵担保責任」)が免責されない
    …不動産会社の買取では免責されることがありますが、仲介の場合は売主が契約不適合責任を負うことになります。
  • 仲介のデメリット③ 内見に対応する手間や時間がかかる
    …購入希望者の内見準備やスケジュール調整、当日の対応などを行う必要があります。
  • 仲介のデメリット④ 周りに知られずに売却するのは難しい
    …広告活動を行って買主を探すため、周囲に知られないままの売却は難しいでしょう。
  • 仲介のデメリット⑤ 仲介手数料がかかる
    …不動産会社の仲介業務に対する報酬として仲介手数料が発生します。仲介手数料は「売買代金の3%+6万円」となるのが一般的です。

(2)買取

買取は不動産会社が直接不動産を買い取る方法です。買主を探す必要がないため仲介手数料はかかりません。

ただし、不動産会社は買い取った不動産をリフォームするなどして転売して利益を得ることになるため、相場価格の7割程度の売却価格となることもあります。

・買取のメリット

買取のメリット
  • 買取のメリット① 仲介と比べて売却期間が短い
    …買取は不動産業者が買取査定価格を算出し、売主がその価格に応じれば契約が成立します。
  • 買取のメリット② 複数回の内見対応が不要
    …不動産会社が家や室内を確認するだけであり、仲介のときのように室内を整えたり、スケジュールを調整したりする手間は不要です。買主候補の一般の方々に家の中を見られることもありません。
  • 買取のメリット③ 近所に知られず売却できる
    …チラシやウェブサイトに掲載されないため、誰にも知られずに売却できます。
  • 買取のメリット④ 契約の確実性
    …不動産会社による買取であるため、売買契約が解除される可能性はほとんどありません。
  • 買取のメリット⑤ 契約不適合責任(旧「瑕疵担保責任」)は原則不要
    …一般的に、買取では「売却した不動産が契約内容と異なる場合、売主が債務不履行の責任を負わなければならない」といった内容の責任(契約不適合責任)が免責されます。
  • 買取のメリット⑥ リフォームなどが不要
    …買取後に不動産会社がリフォームやメンテナンス、クリーニングを行うことが前提である場合が多く、売主がそれらを行う必要はありません。
  • 買取のメリット⑦ 築古・訳あり物件も売却しやすい
    …築古の物件や訳あり物件なども不動産会社によっては積極的に買い取ってくれます。
  • 買取のメリット⑧ 仲介手数料がかからない
    …仲介がないため、仲介手数料は発生しません。

・買取のデメリット

買取のデメリット
  • 買取のデメリット① 売却価格が低い
    …買主である不動産会社は、購入した不動産にリノベーションなどの付加価値をつけた上で、自社の利益が出るように販売するのが一般的です。そのため、買取価格は相場価格の7割程度になることもあります。
  • 買取のデメリット② 不動産によっては買取ができない場合もある
    …建物の老朽化が著しく活用が難しい場合などは買い取ってもらえないこともあります。

(3)個人売買

インターネット上で購入希望者を募ったり、知人や友人に声をかけるなどして、個人間で不動産の売買をすることもできます。

ただし、専門的知識を有しない個人間で取引をすると、物件に問題があることが売却後に発覚したり、手続き上の不備があったりしたときにトラブルになってしまうことがあります。

不動産の売却に関するトラブルでは、損害額が数千万円単位にのぼることも少なくありません。そのため、不動産の個人売買はおすすめしません。

3. 家が売れやすいタイミングや時期

次に、家が売れやすいタイミングや時期についてです。

(1)築年数が浅いうちがベスト

当然のことではありますが、家屋は年月が経つにつれてその価値が減少していきます。

築古の物件でも家は売れますが、売るかどうか迷っている場合はできるだけ築年数が浅いうちに行動した方が売れやすいでしょう。

(2)需要が高まる季節

不動産の取引量は3月頃に増加するのが一般的です。これは、新年度が始まるタイミングに合わせて家の購入・引越しをする人が多いためでしょう。このような需要が高まる季節に合わせて不動産を売却するのも一つの戦略です。

4. 無料査定で不動産の相場を知る

さて、ここまで、不動産の売却の流れ・方法・タイミングについて解説しました。なんとなくイメージが掴めてきたら、次にやるべきことは”不動産の価値を把握すること”です。費用をかけずに今から行動できることですので、売却を検討している人はぜひトライしてみましょう。

(1)不動産の査定方法

不動産の査定・鑑定

不動産の査定方法は、大きく2種類あります。それは、建物の状態を見ずに査定額を算出する「机上査定(簡易査定)」と、立地条件などの詳細について実物を確認しながら査定額を算出する「訪問査定」です。

不動産鑑定士が行う「不動産鑑定」という方法もありますが、厳格過ぎる上、費用も高くついてしまいます。そのため、通常の不動産売却では利用しません。

簡易査定(机上査定)訪問査定不動産鑑定
費用無料無料有料(20万円〜)
実施者不動産会社など不動産会社など不動産鑑定士
査定にかかる時間の目安当日〜1週間1〜2週間約3週間
メリット・査定の依頼が手軽で利用しやすい・簡易査定より精度は高い・適正な価値がわかる 
デメリット・査定の精度は高くない・不動産会社の担当者の立会いが必要
・不動産会社の担当者との面談が必要
・費用が高額
備考・不動産仲介会社により査定額に差が出やすいので、複数社への一括査定がおすすめ。・一括査定後の利用がおすすめ・調停や訴訟で不動産の評価額に争いがある場合などに利用

・簡易査定(机上査定)

簡易査定(机上査定)とは、不動産を売却する際に、過去の売買データ等をもとにして不動産の価値を査定する方法です。

不動産を直接見ずに、所在地や築年数、間取りなどの情報をもとに査定額を算出する方法であるため、インターネットで手軽に利用できる反面、精度はそこまで高くないという特徴があります。

中には、自社を仲介で利用して欲しいがために、到底売れもしない金額で査定額を出す業者もいるといわれています。

そのため、無料で利用できる一括査定サイトなどを利用した上で、複数社から提示された査定額の平均値を参考にするといったような利用方法が良いでしょう。

明らかに高額すぎる査定額がある場合には、それを除いた上で平均値を出しても良いと思います。

・訪問査定

訪問査定とは、不動産仲介会社の担当者等が直接現地に出向き、所有者へのヒヤリングのほか、物件の状態、隣地との境界など細かな点を確認したうえで査定する方法です。

現地を直接見て細かな状態を確認・評価できる分、簡易査定よりも査定額の精度が高くなるというメリットがあります。

一方で、スケジュール調整やヒヤリングなどが必要となるため、何社にも訪問査定を依頼するのはあまり現実的ではありません。

不動産一括査定の利用例

例えば、一括査定サイトなどを使って3〜6社に簡易査定を依頼した上で、その結果を踏まえて信頼できそうな業者を2社ほどピックアップし、訪問査定を依頼する・・・といった方法がおすすめです。

・不動産鑑定

不動産鑑定とは、国家資格を持つ不動産鑑定士が不動産の適正な価格を算定する方法です。公的な信用力を持つ点で、不動産会社が行う査定とは異なります。相続した遺産を巡る調停訴訟で不動産の評価額に争いがある場合などに利用されます。

(2)不動産一括査定で手間を省略【おすすめ】

不動産を売却するとき、多くの方は「できるだけ高く売りたい」と考えるでしょう。そのためには、数ある不動産会社の中から最高のパートナー(仲介業者)を探さなければなりません。これが不動産売却の最初の一歩と言っても良いでしょう。

このときに便利なのが、自身が選んだ業者に一括で査定を依頼できる「一括査定サイト」です。

不動産一括査定の仕組み

通常は、数ある不動産会社から複数の会社を自力でピックアップし、一社一社に対して査定を依頼しなければなりません。しかし、同じ内容を個別に相談をしていては、時間も労力も無駄になってしまいます。

その点、「一括査定サイト」を利用すれば、面倒な入力作業を何回もすることなく、一度の入力(所要時間数分)だけで、複数社にまとめて査定を依頼できます。もちろん利用は無料です。

査定額やその理由、担当者の雰囲気なども比較できますので、積極的に利用してみましょう。

不動産一括査定

(3)査定価格で売れるとは限らない

査定価格とは、売りたい家の周辺の成約価格、築年数、間取りなどの条件や不動産市況などのデータをもとに、不動産会社が不動産を客観的に評価し、3か月程度で成約にいたると見込まれる金額を算出したものです。

このように、あくまでも担当者が考える「数ヶ月以内に売れるであろう価格」に過ぎません。

つまり、査定価格と実際の売却価格が一致するとは限らないという点には注意が必要です。当然ながら、査定価格の通りに売れる保証もありません。

査定価格は、不動産会社によってばらつきが出ることがあります。場合によっては数百万円単位で差が生じることもあるため、複数の業者に査定を依頼するようにしましょう。

用語意味
査定価格プロの客観的な評価によって決まる価格。
3か月程度で成約にいたると見込まれる金額。
売出価格不動産売却を開始した時点での販売価格。
成約価格売主と買主が最終的に合意して決めた契約時の価格。
価格に関する用語と意味

5. 媒介契約の種類を比較

土地や一戸建て、マンションなど不動産の売買を行うときは、売主や買主が、宅地建物取引業者(不動産仲介業社)に仲介してもらうのが一般的です。このように、仲介を不動産会社に依頼する契約のことを「媒介契約」といいます。

媒介契約には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があります。

不動産会社へのお任せ度(縛り)が高い順に「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」となります。一般媒介契約は最も自由度が高い契約です。

それぞれの特徴をまとめると次のようになります。

専属専任媒介契約専任媒介契約一般媒介契約
社数1社のみ1社のみ複数可能
買主を自分で見つけたら不動産会社の仲介が必要仲介無しで販売可能仲介無しで販売可能
契約期間最長3か月
※延長の場合は再契約
最長3か月
※延長の場合は再契約
規定なし
※3か月が一般的
不動産流通機構への登録契約から5日以内の登録義務契約から7日以内の登録義務登録義務なし
販売状況の報告7日に1回以上必要14日に1回以上必要規定なし
各契約の違い

1社のみで積極的に売却活動を依頼したい場合は、専属専任媒介契約か専任媒介契約を選びましょう。複数の会社に依頼したい場合には、一般媒介契約を結ぶことをおすすめします。

(1)専属専任媒介契約

専属専任媒介契約は、文字通り、物件を売る際の専属仲介会社として活動してもらう契約です。契約としては最も縛りが多い契約となり、もし自分で買主を見つけたとしても仲介を通さなければなりません。

「専属専任媒介契約」の概要
契約できる会社数:1社のみ
自分で買主を見つけた場合:不動産会社に依頼しなければならない
契約期間:最長3か月(延長時は再契約)
不動産流通機構(レインズ)への登録:契約から5日以内
売却活動の報告義務:7日に1回以上

(2)専任媒介契約

専任媒介契約は、仲介をお任せする不動産会社は1つに絞るものの、もし自分で買主を見つけた場合は自分で売っても良い、という契約です。前述の「専属専任媒介契約」との大きな違いは、自分で買主を見つけた場合の対応です。

「専任媒介契約」の概要
契約できる会社数:1社のみ
自分で買主を見つけた場合:不動産会社を通さずに売っても良い
契約期間:最長3か月(延長時は再契約)
不動産流通機構(レインズ)への登録:契約から7日以内
売却活動の報告義務:14日に1回以上

(1)一般媒介契約

一般媒介契約は、複数の不動産会社と契約ができる媒介契約です。売主は複数の不動産会社に依頼できる反面、不動産会社は売却活動の報告義務を負いません。契約者双方にとって最も縛りのない契約となります。

「一般媒介契約」の概要
契約できる会社数:複数でもOK
自分で買主を見つけた場合:不動産会社を通さずに売っても良い
契約期間:規定なし ※3か月が一般的に多い
不動産流通機構(レインズ)への登録:不動産会社は登録の義務なし
売却活動の報告義務:なし

6. 不動産を売る理由ごとに注意点を解説

ここからは、不動産を売る理由ごとに注意点を解説します。自分のケースではどのような点に注意すべきか確認しておきましょう。

(1)住み替えのために家を売るケース

住み替えのために家を売る場合、まずは「売却先行」「購入先行」かを選択します。

「売却先行」は、文字通り、今の住まいを売ってから新しい住まいを購入することです。「購入先行」は新しい住まいを購入してから今の住まいを売ることです。

売却先行であれば、家を売って得たお金を新居の購入資金に充てることができます。

購入先行は、資金に余裕がある方が新居をじっくり検討するのに向いている方法です。

また、住み替えの場合は、今住んでいる家の住宅ローンがどれくらい残っているのかも重要なポイントです。

家の売却益で住宅ローンを完済できる(アンダーローン)のであれば、比較的スムーズに進めることができるでしょう。そうでない場合は、自己資金でローンを完済できるか検討します。

すぐにローンを完済できない場合は、現在のローンの残債と新居のローンを二重に負うことになります。この場合、2つのローンを同時に支払っていけるかどうかの判断が必要となります。

(2)相続した不動産を売るケース

相続した不動産を売却する場合には、特に「登記」と「税金」に注意しましょう。

まず、登記についてですが、被相続人(亡くなられた方)が所有していた不動産の名義が誰になっているか確認します。

まだ被相続人が所有者となっている場合には、相続によって相続人に所有権が移転したことを示す「相続登記」が必要です。

登記簿上の所有者の名義の移り変わりを、「被相続人→相続人→買主」と正確に反映させるためです。

なお、登記簿は土地と建物それぞれ別で管理されています。土地と建物を相続した場合は、それぞれ相続登記をする必要があります。

次に税金についてです。相続によって取得した不動産を売却した場合には、3000万円の特別控除や物件を長期間所有していた場合の軽減税率など、何らかの軽減措置が適用される可能性があります。

調べてもよくわからない方は、税金のプロである税理士に相談してみましょう。

(3)離婚により不動産を売るケース

夫婦が離婚する際に不動産を売る場合には、公平な財産分与を実現できるよう配慮する必要があります。

双方が合意すれば分与の割合は自由に決められますが、共有財産を合計して2分の1の割合で分与するのが基本です。

まずは不動産の所有者の名義を調べ、夫婦の共有財産に該当するか確認します。

婚姻後に購入した家で、「夫あるいは妻の単独所有」あるいは「夫と妻の共有」であれば、基本的には共有財産に該当するでしょう。

次のような財産は「特有財産」として、財産分与の対象外となります。

特有財産
  • 夫婦の一方が婚姻前から持っていた財産
  • 婚姻中に相続によって取得した財産

婚姻後に購入した家であれば、売却代金は双方で清算するのが一般的です。

ただし、住宅ローンが残っている場合や、別途慰謝料や養育費が問題となるケースでは、それらの点も合わせて分配方法を決めていく必要があります。

話が複雑化して夫婦間で協議がまとまらない場合は、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

7. 不動産売却時にかかる費用・税金一覧

不動産が売却できたとしても、売買代金がそのまま手元に入るわけではありません。なぜなら、売却にかかる費用や税金が発生するからです。

ここからは、不動産売却の際に発生する主な費用と税金について解説します。

(1)印紙税

印紙税は売買契約書に貼る印紙代のことです。

なお、2027年(令和9年)3月31日までに作成された売買契約書は、印紙税が軽減されます。

印紙税の金額は次の表のとおりです。

不動産の売却価格基本の税率軽減された税率
50万円を超え100万円以下1,000円500円
100万円を超え500万円以下2,000円1,000円
500万円を超え1,000万円以下10,000円5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下20,000円10,000円
5,000万円を超え1億円以下60,000円30,000円
印紙税の金額

参照:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁HP

(2)登録免許税

家や土地を売却すると、その不動産の所有者が売主から買主に移ります。それに伴い、登記簿上の所有者の名義も変更しなければなりません(所有権移転登記)。

このときに発生する費用が「登録免許税」です。登録免許税は次の計算式で求められます。

登録免許税=固定資産税評価額×2%(税率)

仮に固定資産税評価額が500万円の場合、登録免許税として10万円の費用がかかります。

固定資産税評価額は、実際の売却価格や市場価格とは異なりますので混同しないようにしましょう。固定資産税評価額は「固定資産評価証明書」を市区町村から取得することで確認できます。

参照:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁HP

(3)譲渡所得税

不動産を売却して利益が出た場合には、売却した利益の譲渡所得に税金がかかります。譲渡所得の税率は、家を保有した期間によって異なります。

所得税住民税合計
短期譲渡所得(土地や建物の所有期間が5年以下)30%9%39%
長期譲渡所得(土地や建物の所有期間が5年超)15%5%20%
譲渡所得の税率

参照:土地や建物を売ったとき|国税庁HP

(4)仲介手数料

仲介手数料は、不動産を仲介で売却できたときに不動産会社に対して支払う手数料です。

仲介手数料は「売買代金の3%+6万円」となるのが一般的です。

たとえば、500万円で空き家が売れた場合、21万円の仲介手数料が発生します。

不動産を業者が直接買い取ってくれるケースでは「仲介手数料」は発生しません。

取引物件価格(税抜)仲介手数料の上限
400万円超取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税
200万円超~400万円以下取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税
200万円以下取引物件価格(税抜)×5%+消費税
仲介手数料の上限(速算式)

参照:宅地建物取引業法

8. 不動産を売却する際の必要書類

(1)簡易査定(机上査定)の必要書類

物件の基本情報のみで行う簡易査定(机上査定)では、査定前に用意しなければならない書類はありません。

ただし、物件の正確な面積などを把握するためにも、「登記簿謄本」は取得しておいた方がスムーズでしょう。

(2)訪問査定の必要書類

不動産会社の担当者が現地に訪れて査定する「訪問査定」では、いくつか用意しておきたい書類があります。一般的には次のような書類を求められることが多いでしょう。

名称取得方法重要度
登記権利証
または登記識別情報
不動産取得時に発行
登記簿謄本
(登記事項証明書)
法務局
地積測量図法務局
建物図面法務局
公図法務局
購入時の売買契約書不動産購入時に作成
本人確認書類

※ 査定時にどのような書類が必要になるかは、不動産会社によって若干異なります。事前に何を用意すべきかは、依頼する不動産会社に直接確認してください。

(3)売却段階での必要書類

不動産を売却する段階では、さらに次のような書類が必要になります。

名称取得方法重要度
登記権利証
または登記識別情報
不動産取得時に発行
固定資産評価証明書市区町村
※東京23区内は都税事務所
固定資産税通知書毎年所有者に届く
実印と印鑑証明書役所・役場
本人確認書類
マンションの管理規約不動産会社等
(マンションの場合)
総会議事録管理会社等
(マンションの場合)
長期修繕計画管理会社等
(マンションの場合)
管理に係る重要事項調査報告書管理会社等
(マンションの場合)
建築確認済証建築時に発行
(一戸建の場合)
検査済証建築時に発行
(一戸建の場合)

※ 売却時にどのような書類が必要になるかは、不動産会社によって若干異なります。事前に何を用意すべきかは、依頼する不動産会社に直接確認してください。

9. 不動産売却に関する質問【Q&A】

Q. 諸費用を抑えて不動産を売却する方法は?

A. 仲介手数料の発生しない売買方法(直接買取、個人売買)を選択する、登記手続きを司法書士に頼まず自分でやるなど、諸費用を抑える手段はいくつか考えられます。ただし、専門家に頼らないことで費用を節約しようとすると、その分失敗のリスクが高まることは理解しておきましょう。

Q. 不動産の登記って何?

A. 不動産登記は、土地や建物の所在地・面積・所有者の氏名・住所などを公の帳簿(登記簿)に記載し、これを一般公開することにより、権利関係などの状況が誰にでもわかるようにしているものです。登記簿謄本は、法務局のほか、オンライン(登記情報提供サービス)で取得することもできます。

Q. 認知症の親が所有する家を売りたいときはどうする?

A. 必ずしも「認知症 = 不動産売買は不可能」というわけではありません認知症の程度によって対応が異なります。

親が認知症によって”自分の行為がどういった結果になるのかを理解する能力”を欠いているのであれば、原則として売却はできません。そのようなケースでは、成年後見制度の利用を検討すべきです。

参考:成年後見はやわかり|厚生労働省HP

Q. 老朽化した空き家や訳あり物件を高く売る方法は?

A. 老朽化した空き家や訳あり物件でも買ってもらえることがあります。訳あり物件を専門的に扱っている不動産買取業社なども存在しますので、何もせずに諦めるのではなく、一度は査定を依頼してみことをおすすめします。

一般的には売れにくいものの、専門業社であれば積極的に買い取ってくれる物件には、例えば次のようなものがあります。

  • 老朽化した空き家、築古物件
  • ゴミ屋敷
  • 事故物件(孤独死・殺人・事故死など)
  • 再建築不可物件
  • 共有持分物件
  • 違反建築物件
  • 旧耐震
  • 借地、底地
  • 債務整理物件
  • 長屋連棟式物件
  • 立ち退き物件
  • 紛争物件 等

10. まとめ|複数の不動産会社に一括査定を依頼することから始めてみよう

不動産売却をする前に、買主に引き渡すまでの流れを把握しておきましょう。

    また、一般的な査定方法や、仲介と買取の違い、媒介契約の中身についてある程度知っておくと、売却活動をスムーズに進めることができます。

    「何となくイメージが掴めてきた」という方は、無料でできる不動産の一括査定から始めてみてはいかがでしょうか。

    スポンサーリンク
    相続放棄に関するコラム
    相続放棄ナビ

    相続放棄を弁護士に相談してみてはいかがでしょうか?

     相続放棄を相談できる弁護士を探す

    タイトルとURLをコピーしました