不動産の相続手続きは自分でできる?やるべきこと・必要書類等を解説

元弁護士

山内 英一

不動産の相続手続きは自分でできる 不動産の相続

不動産を相続する際、「手続きは自分でできるの?」と考える方も多いでしょう。確かに専門家に依頼すれば安心ですが、その分費用がかかります。

そこで、本記事では、自分で不動産相続手続きを進めるための具体的な流れや必要書類、注意点をわかりやすく解説します。

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1. 不動産相続時の主な手続きは?

不動産を相続する際には様々な手続きが必要になりますが、その中でも主な手続きは「遺産分割協議」「相続登記」の2つといって良いでしょう。

まずは相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を引き継ぐのかを決めます。

その後、遺産分割協議で決めた内容に従って、不動産の所有者の名義を被相続人から相続人へ変更する「相続登記」を行うわけです。

これらの手続きには慎重さが求められますが、専門家の手を借りずに自力で進めることも不可能ではありません。

2. 遺産分割協議を自分でやるときの流れ

まずは遺産分割協議から説明します。

遺産分割協議は、相続人同士での遺産の分け方を話し合い、合意を形成する重要な手続きです。相続財産に不動産が含まれる場合、この協議を経て名義変更を進めていきます。

遺産分割協議は、大きく2つのステップで進めます。

(1)遺産分割協議が必要か確認

大前提として、相続人が一人である場合は、遺産分割は不要です。複数人で遺産を分け合うことになる場合に遺産分割協議が必要となります。

また、被相続人が遺言書を残している場合は、基本的に遺言内容に従って分割されるため、遺産分割協議は不要です。

他方で、遺言書がない場合や、遺言書に記載されていない財産が存在する場合には、相続人全員で協議しなければなりません。

相続人の範囲や人数を正確に把握するためには、戸籍謄本を取得して確認する必要があります。また、手書きでも構いせませんので、相続関係図など作成してみると良いでしょう。

(2)遺産分割協議書を作成する

誰がどの遺産を受け継ぐのか協議がまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」として書面に残します。遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印による押印をするのが一般的です。

遺産に不動産がある場合、登記簿に記載された地番や面積、種類を正確に記載する必要があります。誤りがあると登記申請時に差し戻される恐れがあるため、慎重に作成する必要があります。

弁護士等の専門家に、遺産分割協議書の作成のみを依頼することもできますので、ご自身で作成するのが難しいと思う方は、弁護士に相談してみると良いでしょう。

3. 相続登記(不動産の名義変更)を自分でやるときの流れ

次に、相続登記(不動産の名義変更)について説明します。

相続登記は、相続人が自ら手続きを行うことも可能です。ここでは必要書類の収集から申請までの具体的な流れを解説します。

(1)必要書類を収集する

相続登記に必要な書類は、相続の原因や方法によって異なります。まずは、ケースごとの必要書類を確認しましょう。

①遺言による相続登記(遺贈登記)

遺言書がある場合、登記申請には

  • 登記申請書
  • 遺言書
  • 被相続人の除籍謄本や戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
  • 固定資産課税明細書
  • 新しく所有者になる人の戸籍謄本
  • 新しく所有者になる人の住民票

などが必要です。遺言が自筆証書遺言である場合で、法務局に保管されている場合は、「遺言書情報証明書」が必要です。法務局に保管されていない場合には、家庭裁判所での検認が必要ですので注意しましょう。

②遺産分割協議による相続登記

遺産分割協議を経て相続登記を行う場合は、

  • 登記申請書
  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の除籍謄本や戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
  • 法定相続人の戸籍謄本
  • 法定相続人の印鑑証明書
  • 固定資産課税明細書
  • 法定相続人のうち新しく所有者になる人の住民票

などが必要です。ここであらかじめ作成しておいた「遺産分割協議書」が必要になるわけです。

③法定相続による相続登記

遺言書も協議もない場合は、法定相続分に基づいて登記します。この場合、

  • 登記申請書
  • 被相続人の除籍謄本や戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
  • 法定相続人の戸籍謄本
  • 法定相続人の住民票
  • 固定資産課税明細書

などが必要です。

※ 相続登記に必要な書類に関する詳しい情報は、「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」など、法務省の最新の案内を確認すると良いでしょう。

(2)登録免許税を計算する

相続登記には「登録免許税」がかかります。

登録免許税とは、登記を申請するときに国に納める税金のことです。平たく言えば、登記をするときにかかる手数料のようなものと考えれば良いでしょう。

税額は土地や建物の「固定資産税評価額」に税率(1000分の4)をかけて算出します。

登録免許税の計算式
  • 登録免許税=不動産の固定資産税評価額 × 税率0.4%(1000分の4)

例えば、固定資産税評価額が1000万円の土地であれば、登録免許税は4万円となります。

「固定資産税評価額」とは、固定資産税や都市計画税を算出するための基準となる土地や建物の価格のことで、自治体から毎年郵送されてくる固定資産税の納税通知書を見ればわかります。

手元に納税通知書がない方は、固定資産評価証明書を取得することで確認することができます。

この「固定資産税評価額」は、不動産の「実勢価格」や「固定資産税課税標準額」とは異なりますので、混同しないようにご注意ください。

(3)登記申請書を作成する

登記申請書は法務局の書式を基に作成します。

記載内容としては「不動産の表示」「登記の目的」「原因及びその日付」「権利者(相続人)の住所氏名」などがの記入が求められます。

誤字脱字や表記ゆれがあると受理されない可能性があるため、慎重に記入しましょう。

(4)法務局に登記申請をする

書類が揃ったら、管轄の法務局に登記申請を行います。

郵送やオンライン申請も可能ですが、初めての場合は窓口で提出し、書類のチェックを受けると安心かもしれません。不備があればその場で修正指導を受けられるからです。

(5)必要書類を還付してもらう方法

登記完了後、戸籍謄本等の一部の書類について還付請求により返却してもらえます。還付請求書を提出し、原本とコピーを併せて提出することで返却が受けられます。

「相続関係説明図」を別途作成して提出すれば、戸籍謄本などのコピーは不要となる運用もあります。詳細は法務局に聞いた方が良いでしょう。

4. まとめ|不安なときは司法書士等の専門家に依頼を

ここまで不動産相続手続きを自分で行う方法を解説しましたが、専門知識や書類作成の正確さが求められるため、少しでも不安があれば司法書士などの専門家に依頼するのが賢明です。

別途費用はかかりますが、ミスによる二度手間や法的なトラブルを防げる安心感を考えれば、決して無駄な費用ではありません。

自分でできる範囲を見極め、必要に応じてプロの力を借りるようにしましょう。

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