空き家を手放す方法9選|売却から無償譲渡、有料引取や相続放棄も

弁護士 有資格者

山内 英一

空き家を手放す方法 不動産の相続

空き家は「そのうち何とかしよう」と先送りするほど、税金・管理負担・近隣トラブル・行政措置などのリスクが増え、結果として手放す難易度も上がりがちです。

本記事では、空き家を手放す方法を「売ってプラスにする」「無償で譲る」「費用を負担して所有権を手放す」のパターンに整理し、費用や注意点も含めてわかりやすく解説します。

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1. なぜ早く空き家を手放すべき?放置した場合の5つの深刻なリスク

リスク1:固定資産税や都市計画税を支払い続ける必要がある

空き家であっても、不動産を所有している限り、原則として固定資産税・都市計画税は毎年課税されます。利用していないのにコストだけが発生し、家計を継続的に圧迫します。

また、住宅用地の特例(固定資産税が軽減される仕組み)が適用されている場合でも、空き家の状態や行政判断によっては見直しが入る可能性があります。

さらに、相続で取得した場合は、登記や相続人間の調整に時間がかかるほど「税だけ払い続ける」期間が伸びます。

特に注意したいのは次の点です。

  • 納税義務は「住んでいるか」ではなく「所有しているか」で決まる
  • 相続登記が未了でも、実質的な所有者として負担が生じ得る
  • 滞納すると延滞金や差押えリスクが高まる

「維持できる税額か」を早めに見積もり、手放す判断の材料にすることが現実的です。

リスク2:建物の老朽化によって資産価値が下がり続ける

建物は人が住まなくなると傷みが早く進みます。換気不足によるカビ、雨漏り、配管の劣化、シロアリ被害などが典型で、数年放置するだけで修繕費が跳ね上がり、買い手がつきにくくなります。

不動産取引の実務では、古家付き土地として売れるエリアでも、建物状態が悪いほど「解体前提」と見なされ、価格交渉で不利になりがちです。結果として、売却益どころか解体費の負担を求められるケースもあります。

価値下落が加速しやすいサインは次のとおりです。

  • 雨樋の破損・外壁クラック・屋根材のずれ
  • 室内の臭気、カビ、床の沈み
  • 庭木の繁茂、排水詰まり

売れるタイミングを逃すと、解体しないと売れない状況に陥ってしまいます。

リスク3:定期的な維持管理の手間と費用から解放されない

空き家は住んでいなくても管理が必要です。最低限でも通風・通水・清掃・庭の手入れ・防犯確認が求められ、遠方に住んでいる人ほど負担は重くなります。

管理を怠ると劣化が進むだけでなく、侵入や放火、不法投棄などのリスクも高まります。

管理代行を使う人も多いですが、月額費用が発生し、結局「持っているだけで赤字」になりやすいでしょう。

維持管理でよく発生するコスト例
  • 草木の伐採・剪定、害虫駆除
  • 破損箇所の応急修繕(雨漏り、窓、外壁)
  • 火災保険の継続、見回り代行費
  • 遠方の場合は交通費

空き家を手放す検討は、「売却価格」だけでなく「持ち続ける総コスト」と比較して判断するのが合理的です。

リスク4:倒壊や景観悪化で近隣住民とのトラブルに発展する可能性がある

老朽化した空き家は、瓦の落下、ブロック塀の倒壊、雑草の越境、害獣・害虫の発生などを通じて近隣被害につながります。こうした被害が現実化すると、民事上の損害賠償責任を問われる可能性があります。

また、景観悪化や悪臭が原因で自治会・近隣住民から苦情が入ると、精神的負担も大きく、売却活動にも悪影響が出ます。買い手は「近隣関係が悪い物件」を避ける傾向があるためです。

トラブルに発展しやすい例
  • 庭木が隣地に越境し、枝葉や根が侵入
  • 不法侵入者のたまり場化、落書き被害
  • 積雪地域での落雪・屋根崩落

「事故が起きてから」では遅く、早めに処分や管理改善に動くことが予防策になります。

リスク5:「特定空家」に指定され過料や強制解体の対象になる

空き家対策特別措置法の運用により、管理不全の空き家が行政から指導・勧告・命令の対象となり得ます。状態が悪いと「特定空家」等に該当する可能性があり、段階的に行政対応が強まります。

注意すべきは、勧告等により固定資産税の住宅用地特例が外れる可能性がある点です。税負担が増え、持ち続けるコストが急増し得ます。

さらに、命令違反に対する過料、最終的には行政代執行(強制的な解体等)と費用請求に至るリスクもあります。

2. 【少しでもプラスにしたい方向け】空き家を売却して手放す3つの方法

空き家を手放すなら、まず検討したいのが売却です。同じ空き家でも「仲介」「買取」「解体して更地売り」で結果が大きく変わります。

方法①:不動産会社に仲介を依頼してより高い価格を目指す

仲介は、不動産会社が買主を探して売買を成立させる方法で、相場に近い価格(条件が良ければ相場以上)を狙えるのがメリットです。時間はかかり得ますが、「少しでも高く売って手放す」目的なら第一の選択肢とすべきでしょう。

ただし、空き家は、現況の状態・立地・権利関係(共有、私道、境界未確定など)により売れ行きが左右されます。売却活動を始める前に、机上査定だけでなく現地確認を伴う査定を取り、売り方(古家付き/更地/リフォーム素材)を設計することが重要です。

仲介で押さえるべきポイント
  • 境界・越境・雨漏り等の「契約不適合責任」リスクを事前整理
  • 残置物(家財)の処分計画を立てる
  • 相続物件なら、相続登記や遺産分割協議の完了が必要

特に、契約不適合責任は、売主が後から補修費等を負担する火種になり得ます。状況によっては「免責特約」を検討しますが、無条件に免責できるわけではありません。

方法②:専門の買取業者にスピーディーに直接買い取ってもらう

買取は、仲介とは異なり、買取業者が直接買主となる方法で、早ければ数週間程度で現金化・引渡しまで進むことがあります。

最大のメリットはスピードと確実性です。老朽化が進んだ物件、残置物が多い物件、立地が弱い物件でも、条件次第で買い取ってもらえる可能性があります。

一方で価格は仲介より低くなるのが一般的です。業者は再販や解体、リフォームのコストと利益を見込むため、その分が差し引かれるためです。

買取が向くケース
  • 遠方で管理できず、早く手放したい
  • 近隣苦情や行政リスクが迫っている
  • 雨漏り等があり仲介だと売れそうにないorクレームが不安
  • 相続人が多数で長期の売却活動が難しい

注意点として、極端に安い提示や、強引な契約誘導をする業者もゼロではありません。複数社から相見積もりを取り、契約条件(引渡し時期、残置物、測量負担、瑕疵の扱い)を必ず比較してください。

方法③:建物を解体して更地にしたうえで土地を売却する

建物の状態が悪い場合、解体して更地として売ると買主が見つかりやすくなることがあります。買主にとっては、解体手配や近隣対応の手間がなく、住宅用地として計画が立てやすいためです。

ただし、解体には費用がかかり、解体後に売れなければ持ち出しだけが残ります。また、地域や状況によっては「古家付きのままの方が税制面・需要面で有利」なこともあるため、先に不動産会社へ「古家付きと更地のどちらが市場に合うか」を確認するのが鉄則です。

解体すべきかの判断材料
  • 解体にかかる費用(木造/鉄骨/RC、アスベスト有無で大きく変動)
  • 境界確定・測量の必要性(更地だと境界問題が顕在化しやすい)
  • 解体後に住宅用地特例がどう扱われるか、タイミングの確認(固定資産税が跳ね上がる可能性あり)
  • 地中埋設物が出た場合の追加費用リスク

3. 無償で空き家を手放す3つの方法

「売れない」「費用をかけたくない」「誰かに使ってほしい」場合、無償譲渡という選択肢があります。ただし、タダであげる場合でも、登記費用や税金、契約上のトラブル対応は残ります。手続とリスクを理解して進めることが大切です。

方法④:空き家バンクに登録して活用したい人を探す

自治体等が運営する空き家バンクは、空き家を利用したい移住者・事業者に情報を届けられる仕組みです。地域によっては改修補助金や移住支援とセットになっており、通常の市場よりマッチングしやすいことがあります。

売買だけでなく賃貸や無償譲渡の形を取れる場合もあり、「金額よりも活用してくれる人」を見つけたい人に向きます。

ただ、実際のところ、空き家バンクは「すぐ決まる」とは限りません。手間と時間だけがかかり一向に手放せない、という状況になりがちです。

方法⑤:近隣住民や知人、希望する法人へ無償で譲渡する

近隣住民にとっては、隣地を駐車場や庭として活用できるなどメリットがあり、無償譲渡が成立することがあります。

ただし、無償でも「贈与契約」です。契約書なしで進めると後で揉めやすく、境界・越境・設備不具合などが争点になりがちです。必ず書面化し、引渡し条件を明確にしましょう。

無償譲渡で最低限決めるべき条項例
  • 物件の表示、境界・越境の現状
  • 残置物の扱い(誰が、いつまでに処分するか)
  • 引渡し日、固定資産税等の精算方法
  • 契約不適合責任(原則免責とするか、範囲を限定するか)

税務面では、受け取る側に贈与税が発生し得ます。譲る側も、状況次第で税務上の論点が発生します。個別事情が大きいので、税理士・司法書士・弁護士等の専門家と連携して進めると安全です。

方法⑥:自治体への寄付が可能か相談してみる

「自治体に寄付すれば引き取ってくれるのでは」と考える方は多いですが、実務では自治体が無条件に受け取ることは稀です。寄付を受けると維持管理・解体・責任が自治体に移るため、公共目的での明確な利活用見込みがない物件を引き取ってくれる可能性は低いでしょう。

とはいえ、道路拡幅や公園用地、防災目的、公共施設の付帯用地など、自治体側のニーズに合えば可能性はあります。まずは担当課(管財、都市計画、空き家対策等)に相談してみると良いでしょう。

4. 【最終手段】空き家の所有権を手放す方法

どうしても売れない、譲れない、という場合でも、不動産を手放す制度やサービスがあります。

方法⑦:相続開始から3ヶ月以内であれば相続放棄を選択する

空き家が相続によって発生した場合、相続開始(通常は死亡)を知った日から3ヶ月以内であれば、相続放棄をすることができます。

相続放棄が受理されると、原則としてプラスの財産もマイナスの財産も引き継がず、空き家の所有者にもなりません。

ただし、3ヶ月を過ぎると原則として放棄は難しくなり、また「単純承認」とみなされる行為(処分や利益享受など)をすると放棄できなくなる可能性があります。期限管理が極めて重要です。

相続放棄の実務上の注意点
  • 相続放棄すると預貯金等の資産も一切相続できない
  • 相続人全員が放棄すると次順位相続人へ移る(問題の先送りになることも)
  • 放棄後の管理責任も争点になり得るため、現状対応は慎重に
  • 提出書類(戸籍収集等)に時間がかかるので早めに着手する

空き家だけが不要でも、他の財産とのバランスで結論が変わります。遺産全体を把握してから判断しましょう。

方法⑧:空き家の有料引き取りサービスを利用する

有料引取(引取業者への譲渡)は、費用を払ってでも所有権を移し、管理責任から離れたい場合の選択肢です。古い空き家、山林、再建築不可、極端な過疎地など、通常の売却が困難な物件で利用されます。

ただし、引取後に適切管理されず近隣問題が継続するなどのリスクはありますので、信頼できる事業者に依頼することが重要です。

有料引取は、“一定の費用が発生するが確実に終わる“という合理性があります。

方法⑨:いらない土地を国に返す「相続土地国庫帰属制度」

相続した土地について、一定の要件を満たせば国に帰属させられる制度が相続土地国庫帰属制度です。管理困難な土地を手放すための制度として注目されていますが、要件が厳しく、申請すれば必ず通るわけではありません。

また、対象は原則「土地」であり、建物がある場合は更地にする必要があるなど、事前の整備が求められるのが通常です(状況により判断が分かれるため、法務局での事前相談が重要です)。審査手数料や負担金も発生します。

制度利用の典型的なハードル
  • 建物は自己負担で解体しなければならない
  • 境界が不明確、紛争の可能性がある土地は通りにくい
  • 崖地・担保権付きなど、管理に過大な負担がある土地は対象外
  • 負担金(原則20万円〜。面積等で変動)を納付する必要

つまり、「空き家を国に返す」目的で制度を利用する場合、

建物の解体費+(必要であれば)測量等の費用+審査手数料+負担金

が総コストになります。

5. どうしても空き家を手放したい場合に試したい3つの対策

対策①:家財道具をきれいに処分して内覧の印象を改善する

空き家が売れない理由として非常に多いのが「残置物が多く、内覧でマイナス印象になる」ことです。

生活臭やカビ臭、物の圧迫感は、買主に修繕費以上の心理的負担を与えます。まずは家財処分と清掃で、物件の欠点を正確に見てもらえる状態に整えましょう。

実務では、残置物が減るだけで「解体前提」から「リフォーム前提」として検討され、買主層が広がることがあります。

「全部完璧」を目指さなくて良いので、内覧で嫌がられない水準を目指しましょう。

対策②:思い切って価格を周辺の相場より引き下げる

単純な坪単価ではなく、接道条件、再建築可否、インフラ、境界、建物状態を加味して「売れる価格帯」で売ることが重要です。

価格調整の実務ポイント
  • まずは反響(問い合わせ数)で市場の反応を確認する
  • 反響がないなら段階的に価格改定
  • 「解体費相当を引く」など買主の不安を価格で吸収する設計
  • 買取査定も取っておき、いつでも売れる価格を把握しておく

対策③:手放すための出費も覚悟する

空き家は「売って儲かる資産」とは限らず、「負動産」化している場合は、手放すために費用がかかるのが現実です。

重要なのは、「利益を出す」という発想ではなく、「出費してでも、将来の税・管理・トラブルの継続コストを止める」発想に切り替えることです。

特に、有料引き取りサービスは、建物を更地にするのに必要な費用よりも安い費用で引き取ってくれることも期待でき、最小限のコストで手放す現実的な手段となります。

6. 空き家を手放す方法に関するよくある質問

Q. 田舎にある古い空き家でも手放すことは可能ですか?

A. 手放すことができますが、田舎の古家は需要が限定されやすいため、いかに損失を少なくするか、という発想が重要です。

  • 仲介での売却を検討
  • ダメなら不動産業者による直接買取を検討
  • 売れないようなら有料引き取りを検討

というように、段階的に検討していくと損失を小さくできるでしょう。

Q. 自治体は空き家の寄付を受け付けてくれますか?

A. 受け付ける可能性はゼロではありませんが、一般的にはハードルが高いです。自治体側も維持管理や解体の負担を背負うだけの不動産はいらないため、簡単に受け付けてもらえるものではありません。

7. まとめ

空き家を手放す方法は、大きく「売却(仲介・買取・更地売り)」「無償譲渡(空き家バンク、個人・法人への譲渡)」「費用を伴う処分(相続放棄、有料引取、相続土地国庫帰属制度)」の3つに整理できます。

放置すると税負担・価値下落・管理コスト・近隣トラブル・特定空き家指定などリスクが増え、処分がさらに難しくなります。

まずは無料査定と現状整理(残置物、境界、再建築可否、相続登記)から着手し、期限と予算を決めて最適な出口を選びましょう。

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