親から相続した実家が「売りに出しても反応がない」「内覧が入っても決まらない」そんな悩みは珍しくありません。本記事では、親の家が売れない理由を整理し、放置リスクを踏まえたうえで、現実的な処分方法を7つに分けて分かりやすく解説します。
1. なぜ?親から相続した実家が売れない5つの主な原因
「売れない」には必ず理由があります。原因を誤認したまま値下げや広告だけを続けると、時間だけが過ぎて負担が増えがちです。まずは典型的な5原因を点検し、どこにテコ入れすべきかを見極めましょう。
原因①:建物の老朽化や雨漏りなど状態が悪い
築年数が古い実家は、見た目以上に「買主の不安」が大きく、売却の最大の障害になります。特に雨漏り・シロアリ・傾き・給排水の劣化は、内覧時に一発で購入意欲を下げ、住宅ローン審査や火災保険加入にも影響します。
対策としては、次の方針を早めに決めることが重要です。
- 建物状況調査で現状を可視化する
- 不具合の範囲が限定的なら補修して売る
- 補修が重いなら現状のままでの直接買取や更地化も検討する
「直せば売れる」とは限らないため、費用対効果を不動産会社に試算してもらうのが現実的です。
原因②:田舎、駅から遠いなど物件の立地条件が良くない
立地は、売主が努力しても変えられない要素です。過疎地域、駅から遠い、坂道がきつい、商業施設や病院が少ない、冬季の積雪が多いなどは、購入層が限られ、成約まで長期化しやすくなります。
さらに地方では「需要の薄さ」に加え、次の事情が重なって売れにくくなります。
- 価格相場が形成されにくく、査定がブレる
- 空き家が多く、比較されて埋もれる
対策は、一般のポータル掲載だけに頼らず、刺さる相手に届く導線を作ることです。
たとえば、移住希望者向けの媒体、空き家バンク、近隣の賃貸需要(社宅・単身赴任)など、買い方・使い方の提案をセットにすると反応が改善するかもしれません。
原因③:法律上、建て替えができない再建築不可物件である
親の家が古い場合、当時は問題なく建てられても、現在の法規制に適合しないことがあります。
特に、再建築不可(接道義務を満たさない等)の物件は、一般の買主にとって難易度が高く、住宅ローンも通りにくいため売れにくい典型です。
売り出してから再建築不可が判明し、広告や交渉が振り出しに戻ることは絶対に避けたいところです。早期に、次のポイントを確認しておきましょう。
- 接道状況(道路種別、幅員、接道長)
- セットバックの要否(私道・2項道路など)
- 境界の確定状況、越境の有無
対応策として、隣地の取得・通行掘削承諾の交渉、位置指定道路の確認などで再建築可能にできることもあります。
ただし、時間と費用が読みにくいため、あえて再建築不可のまま、訳あり物件を専門的に買い取る業社に売却する方針に切り替える判断も合理的です。
原因④:売り出し価格が周辺の相場より高く設定されている
相続した親の家は思い入れが強く、「この価格で売りたい」という希望が先行しがちです。しかし、市場は感情では動きません。
価格が相場より高いと、そもそも検索条件に引っかからず内覧が入らない、または内覧しても「高い」という印象だけが残ります。
価格設定で重要なのは、次の3つの視点です。
- 成約事例(実際に売れた価格)に基づく比較
- 現状のまま住めそうか、リフォーム前提か、更地前提かで価格帯が変わる
- 値下げ余地を見越して最初から盛ると、結果的に長期売れ残りになりやすい
売れ残り期間が長い物件は「何か問題があるのでは」と疑われ、値下げを重ねても売れづらい状況に陥ることもあります。反響数(閲覧・問い合わせ)と内覧数を指標に、数週間単位で価格・条件を見直すのが現実的でしょう。
原因⑤:内覧時の印象が悪く購入意欲を下げている
内覧は、物件のスペック以上に、生活感・におい・明るさで決まることが多いです。相続した実家は荷物が多く、長期間閉め切ってカビ臭が出ていることも珍しくありません。
買主は、室内に入ったときに「これは手間がかかりそう」と感じると、やはり候補から外したくなルものです。
完璧を目指す必要はありませんが、最低限、改善しやすいポイントは押さえておきましょう。
- 不用品の撤去(最低限、床面が見える状態に)
- 換気・消臭、カビ取り、水回り清掃
- カーテンを開けて採光、照明を全点灯
- 庭の草刈り、玄関周りの整理
「片付けができない」「遠方で通えない」という場合でも、残置物処分や簡易清掃をワンストップで手配できる不動産会社・専門業者はありますので、上手く活用してみましょう。
2. 売れない親の家を放置することで起こる4つのリスク
「今は忙しいので、そのうちなんとかしよう」と放置すると、税金・治安・近隣トラブル・資産価値の面で、不利になる要素が徐々に積み上がります。改めて、放置のリスクを具体的に理解し、早期に方針を決めましょう。
リスク①:特定空き家に指定され固定資産税が最大約6倍に
空き家対策特別措置法の枠組みで、管理不全な空き家は行政から指導・勧告の対象となり得ます。いわゆる「特定空家等」や「管理不全空家」も運用上の焦点です。
勧告を受けると、住宅用地の特例(固定資産税の軽減)が外れ、税負担が最大約6倍に増える可能性があります。
誤解されがちですが、「誰も住んでいない=即指定」ではありません。問題視されるのは、倒壊のおそれ、衛生上の害、景観の著しい損害、周辺生活環境への悪影響などです。つまり、放置で劣化が進むほど指定リスクが上がります。
リスク②:建物の倒壊で近隣に被害が出ると損害賠償を請求される
空き家でも所有者(相続人)は管理責任を免れません。老朽化で屋根材が飛散した、ブロック塀が倒れた、積雪でカーポートが崩れて隣家を破損したなど、事故が起きれば損害賠償の問題になります。

例えば、家屋の倒壊により隣接家屋が全壊し、家屋の居住者3名が亡くなった場合、損害額は2億円になるという試算があります。
また、建物がない山林などについても、自然災害による崖くずれなどが発生した場合には、基本的には土地所有者の費用と責任で土砂を撤去する必要があります。その金額は、数千万円に上ることも考えられるでしょう。
リスク③:不法侵入や放火など犯罪の温床になる
人の出入りがない家は、空き巣・不法占拠・不法投棄・放火の対象になりやすいといわれています。窓が割れている、郵便物が溜まる、雑草が伸びているなどの外観から、「空き家だ」と周囲に分かると狙われやすくなります。
犯罪被害に遭うと、単に修繕費がかかるだけでなく、売却活動にも悪影響が出ます。内覧時に荒れた痕跡があると心理的瑕疵に近い印象を与え、価格交渉の材料にされやすいでしょう。
具体的な予防策は以下です。
- 郵便物の転送・定期回収、タイマー照明の活用
- 割れやすい窓の補強、鍵の交換、見回り
- 近隣への挨拶と連絡先共有(異変時に知らせてもらう)
- 管理委託(空き家管理サービス)
売れない期間が長いほど、こうしたコストが積み重なっていきます。
リスク④:資産価値がさらに下落し売却がより困難になる
都心部の土地は「時間が味方」となり、価値が上がることもありますが、そうでない空き家は逆です。
居住・換気・通水がない建物は、雨漏りや配管トラブル、カビが進行しやすく、あっという間に劣化します。
結果として、当初は「古いけど住める」だった家が、「住むには大規模修繕が必要な家」へと悪化します。
また市場面でも、売れ残り期間が伸びるほど次の不利が生まれます。
- 「売れない理由がある」と買主に推測される
- 値下げの余地が尽き、出口が限定されていく
- 解体費の上昇や人件費高騰で更地化の負担が重くなる
「売れないかも」と感じた段階で、売却以外も含めた出口戦略をしっかり検討し、損失を最小化するよう努めましょう。
3. 親の家が売れないときの処分方法7つ
高値の売却に固執せず、物件の状態・立地・法規制・相続関係に合わせて適切な手段を選べば、解決は一気に進みます。ここでは実務で現実的な処分方法を7つ紹介します。
処分法①:訳あり物件専門の不動産買取業者に直接売却する
再建築不可、雨漏り、シロアリ、残置物あり、境界未確定など、一般の仲介では敬遠されがちな物件でも、事業者による直接買取なら売れる場合があります。
買取の最大の利点はスピードと確実性です。買主探しや内覧対応が最小化される上、片付け不要、契約不適合責任を免責できるなど、売主に嬉しい利点が多くなります。
一方で、多くのリスクを事業者が負う形になりますので、仲介(一般市場)よりは価格が下がるのが一般的です。だからこそ、次の要素の検討は欠かせません。
- 仲介で売れるまでの期間の見込み(固定資産税・管理費・機会損失)
- 解体や片付けに先行投資した場合の回収可能性
- 共有者の合意形成にかかる時間
注意点として、買取業者にも得意不得意があります。必ず複数社から条件提示を取り、契約条件(責任範囲、引渡し時期、残置物扱い、測量の負担)を確認しましょう。
訳あり物件を積極的に買い取っている専門業社は、下記の記事で詳しく紹介しています。
処分法②:更地にして土地として売却する
建物が古すぎて買主が建て替えることが前提の場合、解体して更地にした方が売れやすくなることもあります。
特に、都市部や住宅需要があるエリアでは、建物付きより更地のほうが「解体の手間がない」と評価されることがあります。
ただし、解体は先に数百万円の費用が出ていきます。加えて、解体すると固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が増える可能性もあるため、本当に更地にすべきかの見極めが重要です。
押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 古家付きで売る場合と更地の場合の手取りを比較する
- 解体費用は複数社から見積もりを取得(付帯工事・残置物・地中埋設物も確認)
- 更地引渡し条件で「買主決定後に解体」も検討
「とりあえず先に壊してみたが、更地でも全然売れない」となるのが最悪のパターンです。需要と価格を確認してから動きましょう。
処分法③:自治体の空き家バンク制度を活用する
地方・郊外で一般の不動産市場に乗りにくい場合、空き家バンクは有効な手段になります。移住希望者、二拠点生活、DIY志向の層など、通常の検索では出会いにくい買主候補に届くのが強みです。
空き家バンクのメリットは次のとおりです。
- 移住支援金、改修補助など制度とセットになりやすい
- 地域に根差した相談窓口があり、安心感を与えやすい
- 条件が合えば早期成約もあり得る
一方で、空き家バンクは「登録すれば売れる」ものではなく、価格設定や物件情報の整備が必要です。
間取り図や現況写真、境界・接道の情報、修繕履歴などを丁寧に揃えるほど反響が上がりますが、その分手間はかかります。
また、あまり活発に動いていない自治体だと、制度が形骸化していて、結局長期間手放せないこともありますので注意しましょう。
処分法④:隣地の所有者に購入してもらえないか交渉する
売れない家でも、「隣地の人にとっては価値がある」こともあります。土地を広げたい、駐車場にしたい、日当たりを確保したい、将来の相続対策としてまとめたいなど、合理的な動機があるからです。
特に、変形地、狭小地、再建築不可物件などは、第三者より隣地のほうが活用しやすく、交渉が成立しやすい傾向があります。
進め方のポイントは次のとおりです。
- 直接訪問や、不動産会社を通して打診する
- 境界が曖昧なら、測量・境界確定を前提条件にする
- 価格は「相場」だけでなく「隣地にとっての価値」も踏まえて提案する
ただし、近隣関係は一度こじれると大きな損失となります。これまでの関係性も踏まえた上で打診し、書面で条件を整理するなど、合意形成は丁寧に進めるのが鉄則です。
処分法⑤:更地にして相続土地国庫帰属制度を利用する
どうしても買い手がつかず、管理負担だけが重い場合、相続土地国庫帰属制度が選択肢になります。一定の要件を満たす土地を国に引き取ってもらい、将来の管理責任から解放される制度です。
重要なのは「どんな土地でも引き取ってくれるわけではない」点です。一般的に、建物がある場合は事前に解体して更地にする必要があり、境界や権利関係の整理も求められます。また、審査手数料や負担金が必要です。実務上は次の検討が不可欠です。
注意点は次のとおりです。
- 対象は原則「土地」であり、建物がある場合は更地にする必要がある(自費で解体が必要)
- 境界不明、争いがある、担保権・賃借権等がある、崖地で管理が困難などの事情で却下されることがある
- 審査手数料に加え、負担金(原則20万円〜。土地の性状で増減)を納付する必要
「空き家そのものを国が引き取ってくれる」制度ではなく、解体・整地・権利関係整理をしたうえで、要件を満たせば土地を国庫に帰属できる仕組みでしかなく、「相続土地国庫帰属制度」が最善策となるケースは実際のところ限定的でしょう。
処分法⑥:相続開始から3ヶ月以内に相続放棄を申し立てる
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がない強力な手段です。親の家が「売れない」だけでなく、固定資産税の負担、修繕費、借金、他の相続財産を総合的に見て、「相続しない方が良い」のであれば検討余地があります。
相続放棄をするには、原則として、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。
なお、「家だけいらない」というように、一部の財産のみ放棄することはできません。
処分法⑦:不動産の有料引取りサービスを利用する

買取が難しい物件は、有料引取り(お金を払って引き取ってもらう)という手段があります。
引き取ってもらうためにかかる費用は、業者によってばらつきがありますので、相見積もりをとった方が良いでしょう。
不動産の有料引き取りにかかる費用の見積もりに特化したサービス「不動産引取の窓口」を利用すれば、一度の情報入力で複数の業者に見積もり依頼をすることができますよ!
4. 親の家の処分に関するよくある質問
Q. 家の解体費用はどれくらいかかりますか?
A. 解体費用は構造・延床面積・立地条件で大きく変わりますが、目安としては、木造の一般的な戸建てでも100万円〜400万円程度はかかると思っておくと良いでしょう。
また、解体そのものかかる解体工事費用以外にも、次のような費用が必要になる場合があります。
- 建物滅失登記の費用(数万円程度)
- 廃材処理費用
- アスベスト調査・除去費用(10万円〜数十万円)
- 整地費用
- 養生シート設置費用
これらを含めると、総額で想定よりも大きな出費になる可能性があるため、初期段階で見積もり内容をしっかり確認することが大切です。
Q. 家の中に荷物が残っている状態でも売却できますか?
A. 売却自体は可能ですが、仲介による売却(買主が一般の個人となる場合)では、荷物がないほうが売れやすいでしょう。引渡しまでに残置物を撤去する前提で計画した方が良いと思います。
一方で、買取業者や投資家が購入する場合は、荷物をそのままにした状態で売却することも珍しくありません。
Q. 兄弟で相続した家を処分するにはどうすれば良いですか?
A. 早い段階で遺産分割協議により方針を固定することが重要です。
共有状態は意思決定コストが高く、売却のタイミングを逃しやすため、
- 代表者が単独取得→売却→売却代金を分配する方法
- 一人が単独取得し、他の相続人に対して代償金を払って公平性を保つ方法
が現実的でしょう。
不備のない遺産分割協議書を作成したい場合や、そもそも相続人間で話まとまらない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
5. まとめ
親の家が売れない背景には、老朽化・立地・再建築不可・価格設定・内覧印象といった複数の要因が重なっていることが多く、原因の見誤りが長期化を招きます。
解決策は「仲介で粘る」だけではありません。訳あり物件専門の買取業社に売る、更地にして売却、空き家バンク、隣地への売却交渉、相続土地国庫帰属制度、相続放棄、有料引取りなど、視野を広げればきっと出口は見つかるはずです。




