相続などで受け継いだ「田舎の実家」。誰も住んでいないのに維持費がかかる、活用方法もわからない…そんな悩みを抱えていませんか?
この記事では、実家の売却や活用、放置によるリスク、さらには高額売却のコツまで、フラットな専門家からの目線で解説します。
1. 田舎の実家をどうするべきか
親の介護や相続をきっかけに、田舎の実家を将来的にどうするべきか考える人が増えています。
誰も住まないまま実家を放置すれば、税金や管理費がのしかかるばかりか、最悪の場合は法的トラブルにつながることも。まずは現実的な選択肢を整理し、早めに方向性を決めることが重要です。
(1)相続発生前に実家をどうするか決めておく
田舎の実家に関する問題は、相続が発生してからではなく、相続発生前の話し合いが極めて重要です。
たとえば、相続人となる予定の兄弟姉妹間で「誰が住むのか」「誰が管理するのか」といった点を曖昧なままにしていると、相続発生後に対立するケースも少なくありません。
親が健在なうちに、「将来的に実家をどうするのか」を確認し、文書や遺言書に残しておければ、後々のトラブル防止になります。
特に田舎の実家は需要が少なく、売却も難航しやすいため、早めの合意形成がカギになります。
(2)活用しないなら売却が現実的
本記事でも様々解説していますが、結論としては、田舎の実家を自ら活用する見込みがない場合、現実的な選択肢はやはり「売却」です。
住まない家を長期間維持するには、固定資産税や修繕費、草刈りや防犯対策など、想像以上のコストと労力がかかります。
さらに、放置によって建物が老朽化すると、不動産自体の価値も大きく下がりがちです。できるだけ早い段階で売却を検討することで、資産価値が高いうちに現金化でき、後の負担やリスクを回避できます。
不動産会社に相談し、まずはスマホやPCから数分で依頼できる簡易的な査定を受けることから始めてみましょう。
2. 田舎の実家を相続しそうなときの選択肢
実家の相続が現実味を帯びてきたとき、選択肢を具体的に把握しておけば、後の混乱や対立を避けることができます。住む・貸す・売る・手放す、それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、状況に応じた最適解を選びましょう。
(1)相続人が住む
最もシンプルで費用負担が少ないのが、相続人自身が実家に住むケースです。住民票を移し、居住用として使うことで、固定資産税の軽減措置などの優遇も受けられます。
ただし、田舎の場合は生活インフラや通勤・通学の利便性が問題になることがあり、家族構成や職場との距離も考慮が必要です。将来的に住み続けられるかどうかを冷静に見極めましょう。
(2)住まいとして貸し出す
自分では住まないが建物の状態が良い場合、「賃貸」として第三者に貸し出すという方法もあります。家賃収入を得られるほか、空き家の状態を回避できる点がメリットです。
ただし、賃貸物件として成り立つエリアかどうか、地域の需要を事前に確認することが重要です。また、管理やトラブル対応を委託する管理会社の選定も慎重に行う必要があります。
(3)実家を売却する
実家を手放すなら、最も一般的なのが売却です。老朽化が進む前に売ることで、資産価値を最大限に活かせます。
近年では「訳あり物件」や「空き家再生」などを積極的に扱う不動産会社も増えており、老朽化した田舎の物件でも売却できる可能性は十分にあります。
まずは複数の不動産会社から見積もりを取り、売れる見込みの有無や相場感を掴むところから始めてみましょう。
(4)相続放棄する
「実家を持っていても負担になるだけ」と判断した場合、相続放棄という選択もあります。相続放棄とは、相続人が、亡くなられた方(被相続人)の権利義務の承継を拒否する意思表示のことです。

ただし、相続放棄をすれば他の財産(預金や株など)もすべて放棄することになる点に注意が必要です。
また、相続放棄の手続きには期限(自己のために相続が開始したことを知ってから3か月以内)があるため、早急な判断が求められます。相続人が複数いる場合は、全員の意思をすり合わせることが望ましいでしょう。
(5)更地にして「相続土地国庫帰属制度」で国に返す
2023年に始まった「相続土地国庫帰属制度」を活用すれば、一定の条件を満たす土地であれば、国に引き取ってもらうことも可能です。
ただし、どのような土地でも引き取ってもらうことができるわけではありません。そもそも家屋を取り壊して更地にする必要がある点や、一定の手数料や負担金(20万円が基本)を支払う必要がある点にも注意が必要です。
そのため、この制度は、「売れもしない、誰も引き取ってくれない、自分で管理もしたくない」となったときの最終局面での現実的な選択肢となるでしょう。
(6)家を解体して土地活用する
家屋が老朽化しており住むにも貸すにも向かない場合は、解体して土地活用を検討するのもひとつの手段です。
賃貸アパート等の需要が見込まれない田舎の土地であっても、駐車場や資材置き場、貸農園など、立地によっては新たな活用方法が生まれる可能性もあります。
家屋の解体費用等はかかりますが、長期的に見ると収益化が狙えたり、何もせず放置しているよりは支出を抑えたりすることができるケースもあります。気になる方は、土地活用の専門業者と相談しながら進めていきましょう。
3. 何もせず空き家のまま放置した際のリスク
田舎の実家を「とりあえず放置しておこう」と考えるのはあまり良い判断ではありません。何もしないことで、経済的・法的・社会的なリスクが着実に積み重なっていくからです。以下、そのリスクを具体的に見ていきましょう。
(1)固定資産税や維持管理費用など、金銭的な負担がかかり続ける
住んでいない家にも固定資産税は毎年課されます。また、老朽化を防ぐためのメンテナンスや、庭の草刈り・害虫駆除などの維持管理費用も積み重なります。実家が遠方にある場合は、実家の様子を見に行くだけでも交通費等が嵩んでいきます。
また、適切な維持管理を継続していても、築年数が増えていくとともに、実家そのものの価値が下がっていくことも忘れてはいけません。
誰も住んでいない実家は「負動産」となり、資産どころか出費を生む存在となってしまいます。
【気付けば500万円も出費していた具体的な事例】
「いつでも実家を見られるように」と考えて、水道や電気を止めずに実家を管理。水道代や電気代、固定資産税、火災保険などで年間約20万円。定期的に草むしりや掃除をしに田舎に帰っていたため、新幹線代等の交通費が年間数万円。途中から草むしり等の作業が体力的にきつくなり、草木の手入れは外注に移行。そうした状態を続けていくうちに、あっという間に10年ほど経ち、振り返ると500万円程出費していた。
(2)老朽化した家屋が原因で、近隣トラブル等に発展する
空き家の老朽化は想像以上に早く、数年放置すれば屋根の崩落やシロアリ被害なども起こり得ます。
実家の老朽化が原因で、近隣住宅に悪影響を及ぼした場合、損害賠償請求の対象になる可能性もあります。安全性を確保するためにも、早めの対処が求められます。
(3)行政から空き家の管理について指導や勧告を受ける
長期間放置された空き家は、行政からの管理指導や勧告の対象となります。勧告に従わなければ、過料が発生したり、強制的に改善措置を講じられる場合もあります。
特に周辺住民からの通報があった場合は、行政対応が加速する傾向にあります。
(4)「特定空き家」に指定されると所有者の負担がさらに増加
「特定空き家」に指定されると、固定資産税の優遇措置(住宅用地の特例)が解除され、税額が一気に数倍に跳ね上がることもあります。
また、行政代執行による解体費用などを請求されることもあり、経済的な負担が非常に大きくなります。
(5)結論:活用しない実家は潔く売却すると良い
リスクや費用を冷静に比較した結果、実家を「売却」することが最も合理的な選択肢となるケースが多いでしょう。
特に田舎の実家は年数が経つごとに資産価値が目減りしていくため、早めに決断し、スムーズな処分を目指しましょう。
4. まずすべきことは資産価値の査定
田舎の実家をどうするか決めるには、まずは不動産としての「価値」を知ることが第一歩です。意外にも高く売れるケースもあるため、現状を正確に把握しましょう。
(1)不動産の価値の把握がスタート地点
実家の築年数や構造、立地条件などによって、売却価格には大きな差が生じます。特に田舎の場合、近くにスーパーや病院、学校などの生活インフラがあるかどうかも価格に影響します。
売却するか、活用するかを考える前に、まずは専門家による査定で資産価値を把握しておくことが大切です。
(2)無料一括査定が圧倒的に便利

現在では、複数の不動産会社から同時に査定を受けられる「無料一括査定サービス」が充実しています。一社だけでなく、複数社からの査定を比較することで、適正価格が見えてきます。また、田舎物件を得意とする業者と出会える可能性も高まります。
5. 活用の見込みがあるのか調査
「こんな物件でも活用できるのだろうか・・・」と迷ったときは、プロの視点で活用の可能性を診断してもらうことが重要です。自己判断だけで進めると、後悔や損失につながるリスクがあります。
(1)素人が活用の見込みを判断するのは危険
立地や建物の状況、地域の需要など、土地や建物の活用可否には多くの要因が関係します。たとえば「田舎でも人が来る観光地の近く」や「農業法人が多い地域」など、意外な活用ニーズが眠っているケースもあります。
素人判断で「無理だ」と決めつけてしまうと、チャンスを逃してしまうでしょう。
反対に、素人判断で「需要がある」と判断していざ活用してみたら、ほとんど需要がなく収益が得られない・・・なんてこともあり得ます。
そのため、まずは専門家に相談することが得策なのです。
(2)無料の土地活用プラン請求が便利
活用の見込みを判断する上で便利なのが、複数の不動産会社や土地活用業者が提供する「無料の土地活用プラン請求サービス」です。
アンケートに答えるだけで、駐車場・賃貸住宅・太陽光発電など、様々な提案を一括で受け取ることができます。比較検討することで、思いがけない活用法が見つかる可能性もあります。
6. 相続放棄の注意点
「いらないから相続放棄しよう」と思っても、注意すべき点がいくつかあります。手続きを間違えると、かえって面倒な義務を負ってしまうこともあるため、慎重に進める必要があります。
(1)いらない実家のみを相続放棄することはできない
相続放棄をするときは、「この家だけ放棄して、預貯金は相続しよう」など、財産を選んで放棄することはできません。
あくまで「相続人としての地位を放棄」するものであり、預貯金や他の不動産、負債など、すべてを相続しないという扱いになります。
つまり、実家だけいらないという選択肢は取れないということです。
(2)相続放棄後も実家の管理責任(保存義務)を負い続ける可能性がある
相続放棄をしても、一定の条件のもとでは、実家の適正な管理義務(民法940条)を引き続き負う場合があります。実家の管理責任から完全に免れるためには、相続放棄後の対応も計画的に考える必要があります。
(3)相続放棄の手続きには期限がある
相続放棄の申述は、原則として「自己のために相続が開始したことを知ってから3か月以内」に行わなければなりません。具体的には、多くのケースでは、被相続人の死亡を知った日が起算点となります。
この期限を過ぎると、原則として相続したものとみなされ、放棄はできなくなります。少しでも迷いがある場合は、早めに弁護士に相談し、方向性を決めることが大切です。
7. 田舎の実家でも売却できる可能性はある!
「どうせ田舎だし、売れないだろう」と諦める前に、正しい知識と手順を知ることが大切です。実は、田舎の物件を専門的に扱う不動産会社や買取業者も多く存在し、売却成功のチャンスは十分にあります。
(1)田舎の実家が売れないと思われる理由
理由①:田舎の物件は需要がない
人口減少により、特に若者の移住が少ない田舎では、住宅としての需要が低くなっていることは事実です。しかし一方で、リモートワークの普及により「地方移住」や「別荘利用」としての需要は高まっていますので、一概に「田舎の物件は需要がない」と決めつけない方が良いかもしれません。
理由②:建物の老朽化が激しい
長年メンテナンスされていない場合、建物の老朽化が進んでおり「売り物にならない」と思われがちです。実際、築年数が増していくほどに建物の価値は減っていき、建物を欲しがる一般人は少なくなります。
ただし、最近ではリフォーム前提で購入する投資家や業者が増えており、老朽化が激しい物件でも売却が成立することがあります。
理由③:田舎の物件を扱いたがる不動産会社が少ない
一般的な都市部の不動産会社では、田舎の物件の取り扱いに消極的な傾向があります。そのため、もし大手の不動産会社に取扱いを断られてしまっても、簡単に諦めずに「田舎物件専門」や「訳あり物件歓迎」と謳っている会社を選んで相談をしてみましょう。
(2)訳あり物件や田舎の実家を積極的に扱う不動産買取業者が存在する
最近では、空き家や田舎の物件を専門に取り扱う不動産買取業者が注目を集めています。老朽化や立地の悪さなどを前提に買い取ってくれるため、「売れない」と諦める前に相談する価値があります。
(3)不動産買取業者のメリット
メリット①:契約不適合責任が免責される
売却後に「雨漏りがあった」「シロアリ被害があった」といったトラブルが起きても、契約不適合責任を免れることができます。個人間売買よりもリスクが少ない点が魅力です。
メリット②:最短数日で売れて現金化できる
通常の仲介売却と異なり、買取業者なら最短数日で現金化が可能です。急ぎで処分したい場合には非常に有効です。
メリット③:直接買取なので仲介手数料がかからない

仲介業者を通さないため、売却にかかるコストを抑えることができます。売却価格がやや安くなる傾向はありますが、諸経費の負担を考えると納得感のある選択肢となるでしょう。
(4)実家売却の手順
不動産の仲介会社に売却を依頼する場合は、一般的には次のような流れで進めていきます。
- 【手順1】相場を調べる
- 【手順2】不動産会社に査定を依頼する
- 【手順3】不動産会社と契約を結ぶ
- 【手順4】売買活動を依頼
- 【手順5】条件交渉と売買契約の締結
- 【手順6】決済・引渡し
- 【手順7】確定申告・税金の支払い
不動産の売却の手順や、最低限知っておきたい基本的な知識を身につけたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
8. 田舎の実家を高く売るためのコツ
田舎の物件でも、売り方次第で少しでも高く売ることは十分可能です。ポイントは「適切な情報収集」と「早めの行動」です。
(1)まずは「仲介業者」への依頼を検討
急いでいないなら、まずは仲介での売却を検討しましょう。一般ユーザーが買主となる「仲介」の方が、物件が高く売れる可能性があります。そこで断られてしまうような物件なら、不動産業者による「直接買取」を狙っていきましょう。
(2)無料一括査定で業者を比較する
一括査定サービスを利用して複数社を比較することで、査定額の高い会社や対応の良い会社を見つけることができます。田舎物件に詳しい業者が見つかる可能性も上がります。
(3)問題を放置せず今すぐ行動する
繰り返しになりますが、時間が経てば経つほど、家は老朽化して価値が下がります。「今はいっか・・・」と放置するよりも、早期に行動を起こすことで、手間や費用の削減にもつながることを覚えておきましょう。
(4)自己判断で安易にリフォームや解体工事をしない
「きれいにした方が売れるだろう」と思って自己資金でリフォームや解体をしてしまう人がいますが、あまり良い判断ではありません。
リフォームにかけた費用が売却価格に反映されるとは限らず、むしろ損になることもあるからです。まずはプロの意見を聞いてから動くのが得策です。
9. まとめ
田舎の実家を「どうするべきか」という悩みは、誰にでも起こりうる現実的な課題です。住む・貸す・売る・放棄するなど、選択肢は多岐にわたりますが、“とりあえず放置”は避けるべき選択といって良いでしょう。
特に、固定資産税や老朽化によるトラブル、行政からの指導など、放置によるリスクは無視できるものではありません。空き家問題が顕在化している昨今、国の方針としても「放置する人が損をする」方向に制度を調整していくことも予想されます。
まずは、不動産の価値を正確に把握し、売却や活用の可能性を専門家に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。