相続放棄を司法書士に任せるメリットは?費用相場や弁護士との違いも解説

元弁護士

山内 英一

相続放棄を司法書士に任せるメリット・デメリット 相続放棄に関するコラム

相続放棄の手続きは司法書士に依頼することもできます。では、司法書士に手続きを任せるメリットとデメリットはどのような点にあるのでしょうか。費用の相場や弁護士との違いも含めて詳しく解説します。

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1. 相続放棄の手続きを司法書士に依頼するメリット

まずは、相続放棄の手続きを司法書士に依頼するメリットから紹介します。

(1)必要な戸籍謄本を収集してもらえる

司法書士は戸籍謄本などの書類の取得に精通しています。弁護士と同じように、職務上の権限で戸籍謄本等を取得できる「職務上請求」も利用できるため、手続きに必要な書類を効率的に収集できます。

相続放棄の手続きの中でも、必要な戸籍謄本(除籍謄本・改正原戸籍)を正確に読み取り、迅速かつ正確に収集するという作業はとても大変な部分です。そのような作業が苦手な方は司法書士に依頼すると良いでしょう。

(2)相続放棄申述書の作成をサポートしてもらえる

相続放棄をするためには、「相続放棄申述書」と呼ばれる書面を作成し、家庭裁判所に提出する必要があります。比較的簡易的な書面ではありますが、裁判所に提出する法的な書面であるため正確な記入が求められます。

司法書士は相続放棄申述書の作成代行も行うことができますので、依頼をすることで記入内容の不備や誤りを防ぎ、手続きを円滑に進められるでしょう。

ただし、後ほど説明するように「代理」ではありませんので、書類の作成を代行してもらったとしても、あくまで申述人本人の名義で手続きは進んでいきます。

(3)裁判所からの照会書・回答書への回答方法についてアドバイスをもらえる

必要書類を家庭裁判所に提出すると、約1週間~2週間程度で、家庭裁判所から、相続放棄をしたい方のもとに「照会書(回答書)」が届きます。

「照会書(回答書)」には、相続放棄をしたい方への質問事項が記入されていますので、それに対する回答を返送する必要があります。

照会書・回答書の書式や質問内容は裁判所によって異なることもありますが、申述書に記入をした内容の確認や、相続放棄の申述は自身の意思に基づくものかの確認などがメインです。

質問内容の意味や回答の方法がわからない場合は、担当の司法書士に聞けば教えてくれるでしょう。

(4)相続放棄に失敗するリスクを減らせる

司法書士は戸籍の収集や申述書の作成などをサポートしてくれます。相続放棄の手続きに慣れている司法書士の経験や知識を借りることができれば、手続きに失敗してしまうリスクを最小限に抑えることができるでしょう。

2. 相続放棄の手続きを司法書士に依頼するデメリット

次に、司法書士に任せるデメリットについても見ていきましょう。

(1)全ての作業を任せることができない

司法書士に依頼する場合でも、全ての手続きを完全に任せることができるわけではありません。特に、弁護士に依頼した場合と比較すると、そのサポートの内容の違いが明らかになります。

というのも、相続放棄の手続きについて、弁護士は依頼者の「代理人」として手続きを進めることができますが、司法書士は「代理人」として手続きすることが法律上認められていません。この差によって、サポート内容の違いが生まれます。具体的には次のような違いがあります。

弁護士に依頼した場合、戸籍謄本等の収集、申述書の作成、家庭裁判所への申述、家庭裁判所とのやりとりなど、基本的には全ての手続きを任せることができます。家庭裁判所からの連絡も、代理人である弁護士に対して行われます。

一方で、司法書士は「代理人」として行動できませんので、家庭裁判所からの連絡などは本人に直接来ますし、その対応も自分で行わなければなりません。書類の提出なども、あくまでも本人名義で進めていくことになります。

このように、司法書士と弁護士とでは任せることができる範囲に違いがある点は理解しておきましょう。

(2)司法書士に支払う費用がかかる

司法書士に手続きのサポートをお願いすると、司法書士に支払う費用が発生します。

費用については後ほど詳しく説明しますが、司法書士に手続きを依頼した場合、一般的には3万円~5万円程度の費用が発生するでしょう。

(3)司法書士とやりとりする必要がある

あなたが司法書士に依頼をしたとしても、司法書士はあなたの「代理人」になることができませんから、あくまでも手続きの主体はあなたのままです。

したがって、家庭裁判所からあなたに連絡がきた場合には、その都度どうすれば良いのか司法書士に確認するなど、手続き中は司法書士とのコミュニケーションが欠かせません。

このようなやりとりを最小限に抑えたいのであれば、司法書士よりも弁護士に依頼をした方が良いでしょう。

3. 弁護士と司法書士の違いを整理

相続放棄の手続きを専門家に依頼するのであれば、弁護士司法書士かの二択になります。行政書士や税理士は相続放棄の業務を行うことができません。

では、弁護士と司法書士のどちらに依頼すべきなのでしょうか?その答えを導くためには、弁護士と司法書士の違いを理解する必要があります。

(1)弁護士は相続放棄をすべきかどうかの相談からサポートしてくれる

弁護士であれば、相続放棄をすべきかどうかの相談からしっかりとサポートしてくれます。

例えば、相続放棄について弁護士に相談した結果、

  • 相続財産に含まれる債務を「時効」で消滅させることができる
  • 債権者との交渉によって被相続人の借金を減額できそうである
  • 相続放棄ではなく限定承認をした方が良い
  • 遺産分割協議によって問題を解決した方が良い

といった事情が発覚することがあります。

その場合、時効の援用や交渉、限定承認などを弁護士に依頼してしまえば、そもそも相続放棄をする必要がなくなってしまうこともあり得ます。

このように、弁護士であれば、相続放棄のみにとどまらず、より広い視点から依頼者にとって最善の解決策を検討することができます。

(2)弁護士は難しいケースも代理人として適切に対応できる

相続放棄には、受理されないリスクが高くなるケースも存在します。例えば次のようなケースです。

  • もう少しで3ヶ月の期限が到来してしまう場合
  • 被相続人の死亡から3か月以上が経っている場合
  • 申述人(相続放棄をしたい人)が相続財産を処分してしまっている場合

期限が目前に迫っているケースでは、書面の作成を代行するだけではなく、弁護士が代理人として迅速に対応することが有効な場合があります。

また、難易度の高いケースでは、相続放棄が認められるべきという主張を論理的に適切な根拠に基づいて行う必要があります。

弁護士に依頼した場合には、あなたの代理人として弁護士が主張を組み立て、「事情説明書」や「上申書」といった書面を作成し、申述を行なってくれます。

このように、難しいケースも代理人として適切に対応できる点は、弁護士ならではの強みといえるでしょう。

(3)弁護士に依頼した方が依頼者本人の手間が少ない

本記事の「相続放棄の手続きを司法書士に依頼するデメリット」でも説明したように、弁護士と司法書士ではサポートの内容が異なるのが一般的です。

弁護士に依頼した場合は、相続放棄に必要となる各手続きについて、基本的に丸っと一任できてしまいます

その分、依頼者と弁護士とのやりとりも最小限で済みますので、依頼者の手間を大きく削減することができます。

一方、司法書士は依頼者の「代理人」として行動できません。家庭裁判所から本人に直接連絡がきた時の対応などは、自分で行う必要があります

司法書士のサポートのもと、あくまでも本人名義で手続きを進めていくことになりますので、その分手間がかかると考えて良いでしょう。

このような違いが、次の章でご紹介する費用面にも影響を与えます。

4. 相続放棄をする際にかかる費用

では、相続放棄をする際に費用はいくらぐらいかかるのでしょうか。

(1)自分で手続きをした際にかかる費用・手数料

自分で相続放棄の手続きを進めた場合、多くのケースでは3,000円〜5,000円程度の出費で収まります。

金額に一定の幅を持たせているのは、人によって取得すべき戸籍謄本(除籍謄本・改正原戸籍)の量などが異なるためです。

内訳としては、次のような費用や手数料が発生します。

書類等費用
収入印紙800円(申述人1人あたり)
戸籍謄本1通あたり450円程度(市区町村により異なる)
住民票除票・戸籍附票1通あたり300円程度(市区町村により異なる)
除籍謄本・改正原戸籍1通あたり750円程度(市区町村により異なる)
郵便切手合計500円程度(裁判所により異なる)

(2)司法書士に相続放棄を依頼する場合の報酬|相場は約3万~5万円

次に、司法書士に相続放棄を依頼する場合の費用です。司法書士に依頼する場合は、司法書士に支払う報酬が発生します。

司法書士への報酬金は、1件あたり3万円〜5万円程度が相場とされています。

司法書士に支払う料金は、各司法書士事務所が自由に決めることができますので、全国一律で金額が決まっているわけではありません。

後述する弁護士費用と比べて費用が安い理由は、司法書士は依頼者の代理人として活動できない分、弁護士に依頼した場合よりも依頼者の手間が増えるなどの違いがあるためです。

(3)弁護士に相続放棄を依頼する場合の報酬|相場は約5万~10万円

弁護士に手続きの代理を依頼した場合には、弁護士への報酬金(弁護士費用)を支払う必要があります。

法律事務所によって金額の幅はありますが、相続放棄の弁護士費用は1件あたり5万円〜10万円程度が相場とされています。

弁護士費用についても、各法律事務所が自由に決めることができますので、全国一律で金額が決まっているわけではありません。

5. 相続放棄を依頼する専門家の選び方

ここからは、「結局、司法書士と弁護士のどちらに依頼すれば良いの?」とお困りの方のために、専門家の選び方について解説します。一つの目安として参考にしてみてください。

(1)予算を最小限に抑えるなら司法書士への依頼がおすすめ

まず、専門家に支払う報酬をとにかく安くしたいのであれば、弁護士よりも司法書士に相談・依頼をした方が良いでしょう。

司法書士のサポートを受けながら、自分主体で手続きを進められそうな方にはこちらの方が合っていると言えそうです。

(2)自分の手間や労力を最小限にしたいなら弁護士への依頼がおすすめ

自分の手間や労力を最小限にしたいなら弁護士に依頼するのがおすすめです。

日中は忙しくて裁判所からの電話に出られない方、相続放棄の手続きに極力時間や労力を割きたくない方は、弁護士に依頼した方が良いでしょう。

(3)相続放棄の期限(熟慮期間)が迫っているときは弁護士への依頼がおすすめ

すでにご存知の方も多いと思いますが、相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月」の期間内に行わなければなりません(民法915 条1項)。この期間を熟慮期間といいます。熟慮期間を過ぎてしまうと、原則として相続放棄は認められません。

「自分で戸籍の取得や申述書の作成を行なっていたのでは到底期限に間に合わない」という方は、代理人として行動できる弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士であれば、早急に相続放棄の期間伸長の申立てを進めたり、相続放棄申述書を早急に作成して家庭裁判所に提出し、添付資料を追完するなど、経験に基づいた手法をとってくれるでしょう。

(4)すでに3ヶ月以上過ぎているときは弁護士への依頼がおすすめ

被相続人の死亡を知ってから3ヶ月以上過ぎているときは、原則として相続放棄は認められません。

ただし、3ヶ月の期間を明らかに過ぎていたとしても、例外的に相続放棄が認められるケースも存在します。

そのような例外的なケースを認めてもらうためには、過去の裁判例を参考にしながら、論理的で説得力のある主張をしなければなりません。

したがって、そのような業務を日常的に行なっている弁護士に依頼した方が良いでしょう。

6. よくある質問【専門家が回答】

Q. 司法書士や弁護士への無料相談はできますか?

A. 法律事務所によって相談料は異なりますが、「初回の相談のみ無料」としている事務所も少なくありません。

無料相談を行なっているかどうかは、各事務所のホームページなどから確認しましょう。ホームページに記載がない場合は、電話をかけて確認してみても良いでしょう。

司法書士よる法律相談について

司法書士は、登記手続についての代理や、法務局・裁判所等に提出する書類の作成などをすることができ、これに必要な限度で相談に応じることができます。

また、司法書士のうち、所定の研修を受け法務大臣の認定を受けた「認定司法書士」のみが限られた範囲で法律相談を受けることができるなどの制限もありあります。

相続放棄をすべきかどうかという点から専門家に相談したい場合は弁護士に相談すべきでしょう。

Q. 相続放棄に強い弁護士や司法書士はどのように探せば良いですか?

A. 相続放棄の手続きを弁護士や司法書士に依頼するのであれば、相続放棄の業務を日常的に取り扱っている法律事務所を選んだ方が良いでしょう。

法律事務所のホームページなどで相続放棄を扱っていることを明示している事務所を選ぶのが簡単な方法です。

当サイト「相続放棄ナビ」では、相続放棄の経験が豊富な弁護士、相続放棄に強い弁護士を掲載しています。よろしければ「相続放棄を扱う弁護士に依頼する」をご覧ください。

7. まとめ|自分に合った専門家に相談しましょう

最終的には、自分の状況やニーズに合った専門家に相談・依頼することが重要です。相続放棄は一度しか行えない手続きであり、撤回はできません。

自分でやるのが難しいのであれば、適切なサポートを受けながら慎重に進めた方が良いでしょう。お困りの方はぜひ司法書士や弁護士に相談してください。

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