相続放棄の手続きを弁護士に依頼したら、最終的にいくらの費用がかかるのでしょうか?実際に弁護士業務として相続放棄を扱った経験のある専門家がわかりやすく解説します。
- Q. 相続放棄の手続きを弁護士に依頼するといくらかかる?
- 1. 相続放棄の弁護士費用の相場を独自に調査しました
- 2. 相続放棄を弁護士に依頼するメリットは?
- 3. 無料相談はできる?法律事務所によって費用が異なる理由
- 4. 弁護士費用が高くなりやすいケースは?
- 5. 弁護士費用が安くなりやすいケースは?
- 6. 弁護士の選び方|どの法律事務所に依頼すれば良い?
- 7. 司法書士に依頼したときの費用相場は約3万円〜5万円
- 8. 弁護士と司法書士の違いは?
- 9. 手続きを自分で進めた場合の費用は約3,000円〜5,000円
- 10. 専門家に支払う費用が用意できないときの対処法は?
- 11. まとめ|相続放棄で困ったら弁護士に相談を
Q. 相続放棄の手続きを弁護士に依頼するといくらかかる?
A. 相続放棄を弁護士に任せたときの費用の相場は5万円〜10万円程度です。ただし、費用体系や具体的な金額は各法律事務所によって異なりますので、依頼前によく確認しましょう。
1. 相続放棄の弁護士費用の相場を独自に調査しました
相続放棄にかかる弁護士費用の相場は5万円〜10万円程度と言われていますが、実際のところどれくらいの費用となるのでしょうか。当メディア「相続放棄ナビ」が実際の法律事務所の弁護士費用を独自に調査してみました。
調査の結果、弁護士費用の平均は78,089円(税込)となりました。
なお、ここでいう「弁護士費用」とは、着手金・報酬金・事務手数料等の費用の合計金額となります。
法律事務所 | 初回相談料(税込) | 弁護士費用(税込) |
---|---|---|
法律事務所A | 無料(60分) | 66,000円 |
法律事務所B | 5,500円〜11,000円(30分) | 32,890円 |
法律事務所C | 5,500円(30分) | 44,000円 |
法律事務所D | 無料 | 55,000円 |
法律事務所E | 無料 | 55,000円 |
法律事務所F | 無料 | 66,000円 |
法律事務所G | 無料 | 110,000円 |
法律事務所H | 無料 | 110,000円 |
法律事務所I | 無料 | 132,000円 |
法律事務所J | 無料 | 110,000円 |
※調査方法・・・相続放棄の弁護士費用をWEBサイト上で公開している法律事務所を10箇所調査しました。相続放棄に関連する検索で表示される法律事務所から、無作為に10箇所選出しています。各料金は本記事公開時点のものですので、後に変更されている場合があります。
また、法律事務所の費用体系には以下のような特徴が見られました。
2. 相続放棄を弁護士に依頼するメリットは?
では、上記の費用を支払ってまで弁護士に相続放棄の手続きを依頼するメリットはどのような点にあるのでしょうか。
結論としては、手続きを弁護士にまるっと一任することで、自身の時間や労力を無駄に消費することがなくなり、かつ、相続放棄に失敗するリスクも軽減できる点に大きなメリットがあります。
具体的には、次のようなメリットがります。
相続放棄を弁護士に任せるメリットとデメリットについては、下記の記事で詳しく解説しています。
3. 無料相談はできる?法律事務所によって費用が異なる理由
相続放棄について無料相談ができるか否かは、法律事務所によって異なります。無料相談を実施している法律事務所もあれば、相談料が発生する法律事務所もあります。
有料相談としている法律事務所の場合、相談料は30分あたり5,000円程度が一般的です。相続放棄の相談であれば、通常30分〜1時間程度で相談は完了するでしょう。
また、前掲の独自調査の結果のとおり、相続放棄の手続きを代理することにより発生する弁護士費用も法律事務所によって幅があります。
- 依頼者が全ての戸籍類を取得するのか、弁護士が代理で取得するのか
- 申立て後に家庭裁判所から送られてくる「照会書」への回答も弁護士が行うのか否か
など、事務所ごとにサポートの程度が微妙に異なり、それが弁護士費用に影響していることが考えられます。
また、
- 相続放棄をすべきか否か迷っている方も広く受け付けているのか
- 相続放棄をする意思が確定していることを前提として受け付けているのか
- 相談料を無料としているのか、有料としているのか
といった違いも費用に影響しているように思われます。
その他、法律事務所のビジネスモデル、弁護士の専門性、法律事務所の知名度など、様々な要因が考えられます。
4. 弁護士費用が高くなりやすいケースは?
(1)相続放棄の期限を経過したケース
相続放棄の手続きは「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に行わければならず(民法915条1項)、期限経過後の相続放棄は原則として認められません。
ただし、期限を経過していても、家庭裁判所へ事情説明書や上申書等を提出することで、例外的に期限後の相続放棄が認められることもあります。
とはいえ、期限に余裕があるケースと比較すると、相続放棄が認められる可能性が低くなる上、事情説明書等の書類を追加で作成する必要が発生します。そのため、弁護士費用も少し高くなることがあります。
(2)相続放棄の期限がほとんど残っていないケース
例えば、相続放棄の期限が残り1週間しか残されていないタイミングで弁護士に相談・依頼をしたようなケースです。
このようなケースでは、弁護士は他の業務に優先してその案件に対応しなければならなくなることがありあます。また、ケースによっては、ひとまず期限を延長してもらうための手続き(熟慮期間伸長の申立て)を行った上で、相続放棄の手続きを進めるなど、追加での業務が発生することもあります。
そのため、弁護士費用も少し高くなることがあります。
(3)相続財産の調査も依頼するケース
相続放棄をする際、亡くなられた方が所有していた財産(借金やローン等のマイナスの財産も含む)を調べる方もいますが、その作業は必須ではありません。相続財産の調査をしてもしなくても、相続放棄をすることはできます。
しかし、相談者の中には、「相続財産を可能な範囲で調査してもらい、その内容によって相続放棄をするかどうか決定したい」という方もいらっしゃいます。
そのようなケースでは、相続財産の調査をするための費用として、別途追加で料金が発生することが多いでしょう。
(4)相続財産精算人の選任の申立ても依頼するケース
相続放棄をした結果、相続人がいなくなってしまい、自身が占有している空き家だけが残ってしまうケースなど、相続放棄後も自身が財産の管理義務(保存義務)を負うことがあります。
そして、この管理義務(保存義務)を免れるための手段として、家庭裁判所に対し、相続財産精算人(旧 相続財産管理人)の選任を求めることがあります。
相続財産精算人の選任の申立ては自分で手続きをすることも可能ですが、内容が難しく、書類に不備があると手続きが無効となることもあるため、弁護士に依頼するのが現実的です。
相続財産精算人の選任の申立てを弁護士に依頼した場合には、当然ながらその分の追加料金が発生します。
5. 弁護士費用が安くなりやすいケースは?
(1)相続放棄の手続き以外は依頼しないケース
残された相続放棄の期限にある程度の余裕があり、かつ、単純に相続放棄の手続きのみを依頼するだけ(相続財産の調査などを依頼しない)であれば、基本的に追加での費用は発生しないでしょう。そのため、弁護士費用は比較的安くおさまります。
(2)必要な戸籍謄本等を自力で揃えているケース
法律事務所の中には、「依頼者が戸籍謄本等の必要書類を全て集めてくれるのであれば、弁護士費用を安くします。」といったプランを用意している事務所もあります。
ただし、全ての法律事務所がそのようなプランを用意しているわけではありませんのでご注意ください。
6. 弁護士の選び方|どの法律事務所に依頼すれば良い?
では、どの法律事務所に依頼すれば良いのでしょうか。この点について、求めるサービス内容や経済事情は人それぞれですから、「費用が安いから良い(悪い)」「費用が高いから悪い(良い)」などと一概に言えるわけではありません。
各法律事務所のサービス内容(何をどこまでやってもらえるのか)をしっかりと確認した上で、金額に納得できるようであれば依頼しても良いと思います。
少なくとも、相続に関わる案件を取り扱っていることを事務所のホームページなどで明示している法律事務所を選んだ方が良いでしょう。
また、無難な選択としては、極端な価格設定の事務所は避け、上記の相場に近い弁護士費用を設定している法律事務所に依頼するというのも一つの考え方でしょう。
当サイト「相続放棄ナビ」では、相続放棄の経験・実績が豊富な弁護士(法律事務所)を掲載していますので、ぜひ参考にしてください。
7. 司法書士に依頼したときの費用相場は約3万円〜5万円
ちなみに、相続放棄の申述書の作成代行などの業務は、司法書士も行うことができます(行政書士や税理士は専門外です。)。
司法書士に書面の作成等を依頼した場合は、司法書士への報酬として3万円〜5万程度の費用を支払うのが一般的です。
弁護士費用の相場(5万円〜10万円程度)と比べると費用は安くおさまるのが一般的といえます。
ただし、費用が安い分、”できることの範囲に違いがある”という点は知っておくと良いでしょう。以下、解説します。
8. 弁護士と司法書士の違いは?
ここまでの解説をみて、「同じ専門家なのに、なぜ弁護士と司法書士とで費用が数万円も違うの?」「弁護士と司法書士のどっちに依頼すれば良いの?」とお思いになった方もいらっしゃると思います。
弁護士と司法書士とで費用が異なる理由は、その職務の権限の違いよるところが大きいでしょう。
相続放棄の手続きについて、弁護士は依頼者の「代理人」として手続きを進めることができますが、司法書士は「代理人」として手続きすることが法律上認められていません。
この差によって、サポート内容の違いが生まれます。具体的には次のような違いがあります。
弁護士に依頼した場合、戸籍謄本等の収集、申述書の作成、家庭裁判所への申述、家庭裁判所とのやりとりなど、基本的には全ての手続きを任せることができます。家庭裁判所からの連絡も、代理人である弁護士に対して行われます。
一方で、司法書士は「代理人」として行動できず、あくまでも申述書の作成の代行等が主な業務となります。家庭裁判所からの連絡などは本人に直接来ますし、その対応も自分で行わなければなりません。書類の提出なども、あくまでも本人名義で進めていくことになります。
弁護士 | 司法書士 | |
---|---|---|
依頼できる範囲の広さ | ○ 代理権があるため丸投げ可能 | △ 書類の作成は依頼可能だが、手続きは本人が行う |
手続きの代理 | ○ 代理で申立て可能 | × 代理人にはなれない |
照会書(回答書)への対応 | ○ 代理で回答可能 | × 代理で回答できない |
家庭裁判所とのやりとり | ○ 弁護士が全て対応 | × 本人が全て対応 |
このように、司法書士と弁護士とでは任せることができる範囲に違いがあり、その差が費用に反映されることが多いという点は理解しておくべきでしょう。
相続放棄の業務においての弁護士と司法書士の違いや、司法書士に依頼するメリット・デメリットについては、下記の記事で詳しく解説しています。
9. 手続きを自分で進めた場合の費用は約3,000円〜5,000円
相続放棄の手続きを弁護士や司法書士に依頼せず、自力で進めた場合にも、申述書に貼る収入印紙代(800円分)や、予納する郵便切手代(400円〜500円程度)、戸籍謄本の取得にかかる手数料などで、合計3,000円〜5,000円程度の費用がかかるのが一般的です。
ただし、上記の費用はあくまでも目安に過ぎません。というのも、相続放棄に必要な書類は、被相続人(亡くなられた方)との続柄によって異なるからです。
それに伴い、取得すべき戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)の量も異なりますので、人によっては5,000円以上の費用が発生するケースもある点にご注意ください。
10. 専門家に支払う費用が用意できないときの対処法は?
最後に、弁護士や司法書士などの専門家に支払う費用が用意できないときの対処法について解説します。結論としては、法テラスを利用するか、やむをえず自力で進めるかの二択になるのではないかと思います。
(1)法テラスの民事法律扶助業務を利用する
法テラス(日本司法支援センター)は、国によって設立された法的トラブル解決のための総合案内所です。経済的に余裕のない方などが法的トラブルにあったときに、無料で法律相談を行い、条件を満たす場合には弁護士・司法書士の費用等の立替えを行ってくれます。
経済的な理由で弁護士費用をどうしても捻出できない場合は、法テラスの民事法律扶助制度の利用を検討してみましょう。
本制度は、収入等が一定額以下であることなどの要件を満たす方に限り利用できる制度です。利用者は、分割で法テラスに費用を返済していくことで経済的な負担を軽減することができます。
(2)自分で手続きをする
専門家への費用を支払えず、法テラスの利用もできないとなれば、やむをえず自分で手続きを進めることになるでしょう。
ケースによっては必要書類が大量となり自分でやるのが難しいこともありますが、訴訟のように「素人がやるのはとても困難」というような手続きではありませんので、可能な範囲で挑戦してみても良いと思います。
当サイト「相続放棄ナビ」では、自分で手続きを進めたい人のために、具体的な方法や手順も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
11. まとめ|相続放棄で困ったら弁護士に相談を
遺産相続を拒否したい場合には、相続放棄が有効ですが、弁護士に依頼する場合には費用が発生します。
- 弁護士に依頼した場合の費用の相場は1件あたり5万円〜10万円程度
- 司法書士に依頼した場合の費用の相場は1件あたり3万円〜5万円程度
- 手続きを全て自分で進めた場合の費用は1件あたり3,000円〜5,000円程度
- 弁護士と司法書士とで”できること”の範囲に差がある
と覚えておきましょう。
特に、次のような方は弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
この記事が、皆様の参考になれば幸いです。