Q. 故人(被相続人)が負っていた養育費の支払い義務も相続放棄できますか?
A. 将来支払う分の養育費については、そもそも相続されませんので、相続放棄の有無にかかわらず支払う必要はありません。一方で、既に支払日がやってきたのに支払われていない未払いの養育費は相続の対象となります。ただし、未払いの養育費については、相続放棄をすれば支払う必要はありません。
1 将来分の養育費の支払義務は相続されない
一般的に、養育費は、毎月一定額の支払義務が生じる形で取り決められています。例えば、次のような条項です。
甲は乙に対し、丙の養育費として、令和●年●月から令和●年●月まで、毎月末日限り、金●万円を支払う。
このような定期金払いでまだ支払日が来ていない養育費(将来分の養育費)の支払義務は、相続の対象にはなりません。
なぜなら、養育費は親子関係から生じる扶養義務に基づくものであり、一身専属的なものとされているからです。
「一身専属的」というと少し難しいですが、ここでは「その人固有のもの」「その人だからこそ負っている義務」という意味で理解すれば良いでしょう。
このように、将来分の養育費の支払義務はそもそも相続財産に含まれませんので、相続放棄をするまでもなく、その支払義務が相続人に引き継がれることはありません。
2 未払いの養育費は相続の対象となる
では、既に支払日がやってきたのに支払われていない「未払いの養育費」はどうでしょうか。
この場合、将来分の養育費とは結論が異なります。すでに発生している未払いの養育費については、通常の金銭支払債務と同様に扱われるため、相続の対象になるのです。
したがって、相続放棄をしなければ、支払義務が相続人に引き継がれることになります。
ただし、他の金銭支払債務と同じように、相続放棄をすればその支払義務は引き継がなくて済みます。
被相続人が、本来支払うべき養育費を支払っておらず、その金額が多額となっている場合には、相続放棄をすることも検討してみましょう。