遠方に住んでいる人の相続放棄。手続きを郵送で完結する方法や事例を紹介

元弁護士

山内 英一

遠方・疎遠でも問題なし 相続放棄に関するコラム

亡くなった方(被相続人)とは別々で暮らしていてお互いの家が遠い場合、「家庭裁判所に行けないけど相続放棄の手続きはできるの?」とお困りの方もいらっしゃるでしょう。この記事では、郵送で手続きを進める方法や事例について解説します。

結論: 相続放棄は郵送で完結できるので遠方でも問題ない

まずは結論から。相続放棄の手続きは郵送で完結できるので、遠方でも特に問題ありません。郵送で手続きを行えば、ほとんど全てのケースで家庭裁判所に直接出向くことなく相続放棄の手続きをすることができます。

なお、手続きを依頼する法律事務所の場所についても特に限定はありません。例えば、自分は東京都に住んでいて、申述先となる家庭裁判所(被相続人の住所地)が青森県である場合、依頼する法律事務所は東京都にある法律事務所でも良いですし、青森県やそれ以外の県にある法律事務所でも構いません。

1 相続放棄の申述は郵送でもできる

相続放棄の手続きは、次のような流れで進んでいきます。

相続放棄の流れ

まず、相続人が誰であるかを確定する作業は「戸籍謄本」等を見て行いますが、戸籍謄本等は、各自治体から郵送で取得することができます。

相続放棄申述書は、裁判所のウェブサイトから書式(PDF)をダウンロードし、印刷して作成することができます。添付書類となる戸籍謄本等も郵送で取得可能です。

提出先となる家庭裁判所が遠方にある場合、直接出向かなくても、郵送で申述書等の書面を提出することができます。ちなみに、提出先となる家庭裁判所は、「亡くなられた方が最後に住んでいた住所地の家庭裁判所」です。

申述書等を提出した後に家庭裁判所から「相続放棄照会書(回答書)」が送られてきますが、こちらは申述人(相続放棄したい人)の住所宛に郵送で送られてきます。回答書の返送も郵送で行います。

「相続放棄申述受理通知書」も申述人(相続放棄したい人)の住所宛に郵送で送られてきますし、「相続放棄申述受理証明書」の取得も郵送で行うことができます。

このように、相続放棄の手続きは、基本的に郵送で完結することができるのです。

2 出頭の可能性が全くないとは言い切れない

注意点として、ケースによっては裁判所から出頭を求められる可能性が全くないとは言い切れません。相続放棄の手続きの中で裁判所から出頭を命じられるケースはまずありませんが、出頭を求めることが不可能というわけではないからです。

万が一出頭を命じられてしまった場合には、申述人本人(相続放棄したい人)が、家庭裁判所(亡くなられた方が最後に住んでいた住所地の家庭裁判所)まで出向くことになるでしょう。

3 弁護士に依頼しても郵送で完結できる

自分で手続きを進める場合はもちろん、弁護士に依頼する場合であっても、基本的には郵送で完結させることができます。

相談はメールや電話、オンライン会議等で行うことができますし、法律事務所との契約書のやりとりは郵送で行うことができます。相続放棄の依頼であれば、その後の弁護士とのやりとりも電話やメールを利用すれば足りるでしょう。

また、万が一家庭裁判所から出頭を求められた場合であっても、弁護士があなたの代理人として出頭することができます。

4 全て郵送で済ませた事例

東京都に住むAさんは、青森県に住む親が亡くなった件について、相続放棄の手続きを弁護士に依頼することにしました。

Aさんはインターネットで相続放棄を扱っている東京都内の法律事務所を見つけ、電話をかけました。当日中に弁護士への電話相談を30分程度行い、手続きの流れや費用について説明も受け、その法律事務所に依頼することにしました。

数日後、Aさん宛に法律事務所から届いた契約書に署名押印して返送しました。また、弁護士費用を指定の口座に振り込みました。

担当弁護士は早速業務に取り掛かり、Aさんや亡くなった方の戸籍謄本や除籍謄本等を取得し、申述書も作成しました。その後、弁護士は申述書等の必要書類を青森家庭裁判所に提出しました。

照会書(回答書)はAさんの自宅に届いたので、Aさん自身で回答を記入して青森家庭裁判所に返送しました。

無事に相続放棄は完了し、青森家庭裁判所から依頼先の法律事務所に「相続放棄申述受理通知書」が届きました。

Aさんは、弁護士から「相続放棄が完了した」旨の連絡を受け、本件は無事に解決となりました。「相続放棄申述受理通知書」は担当弁護士から郵送で送ってもらって受け取りました。

5 手続きが大変だと感じたら弁護士に相談を

戸籍謄本等の取得を郵送で進める場合、取得に意外と時間がかかる点には注意が必要です。一つ一つの作業を効率良く行わなないと、3ヶ月の期間制限(熟慮期間)に間に合わなくなってしまうこともあります。

熟慮期間内に正確かつ迅速に必要書類を収集・作成することが難しそうだと感じたら、できるだけ早めに弁護士に相談しましょう。慣れている弁護士であれば、スムーズに手続きを進めてくれるでしょう。

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