弁護士への相談や依頼は、多くの方が初めての経験です。この記事では、相続放棄を弁護士に依頼するときや依頼した後、どのような流れで進んでいくのかわかりやすく解説します。
1 相談する法律事務所を探す
相続放棄を弁護士に依頼すると、一般的には上記のような流れで進んでいきます。
まずは相続放棄について相談する法律事務所を探しましょう。弁護士は法律事務所に所属しています。
弁護士1人で営業している法律事務所もあれば、100名以上の弁護士が所属している大規模な法律事務所もありますが、事務所の規模によって相続放棄に関する弁護士の能力が大きく異なることはありません。
したがって、「大規模の方が良い」「小規模の方が良い」という選び方ではなく、相続放棄を扱っていることを明示しているか、費用がどの程度かかるのかなどに着目して選ぶと良いでしょう。
なお、弁護士への相談は電話やメールで、契約書の締結などは郵送で行えますので、相続放棄については自身が住んでいる都道府県以外の法律事務所に依頼しても特に問題はありません。実際に、全国各地からの相続放棄の依頼を受けている法律事務所も存在します。
それでも、電話・メール・WEB会議などの方法ではなく、弁護士と直接対面して相談したいという方は、自宅や職場の近くの法律事務所を探すと良いでしょう。
また、相続放棄の手続きは基本的に郵送で行えますので、法律事務所と家庭裁判所との距離などを気にする必要もありません。
2 法律事務所に連絡する
相談してみたい法律事務所が決まったら、WEB上に設置されている問合せフォームから、あるいは電話をかけるなどして、法律事務所に連絡します。
各法律事務所によってやり方は様々ですが
- 電話で事務員さんが要件を聞き取り、所属弁護士に伝えてくれる
- 弁護士のスケジュールを確認して相談時間の日程調整をしてくれる
などして、別途弁護士への相談時間が設けられるのが一般的です。また、この時点で大体の費用感を教えてくれることもあります。
3 初回の相談
来所が不要な場合は電話やWEB会議などの方法で、来所が必要な場合は相談者が法律事務所に出向いて、初回の相談を行います。
相続放棄の相談であれば、30分〜1時間程度で終わるのが一般的です。
相談時には、例えば次のようなことを聴かれるでしょう。
なお、初回の相談料は無料としている事務所も多いですが、有料の場合もあるので相談料は事前に確認しましょう。
4 委任契約の締結
相談の結果、相談者が依頼したいと思い、弁護士も受任できると判断した場合には、両者で委任契約が締結されます。
このとき、契約関係を明確にするため、委任契約書に署名・押印する必要があります。
電話やWEB面談の結果依頼することになった場合には、郵送で契約書のやりとりを行うことも可能です。
5 弁護士費用の支払い
弁護士費用を支払うタイミングは各法律事務所との契約内容によって異なりますが、相続放棄の依頼であれば、委任契約締結後、弁護士が仕事に着手する前のタイミングで費用を支払うケースが多いでしょう。
法律事務所によっては、相続放棄完了後に支払うケースもあるかもしれませんので、契約時に確認しておきましょう。
費用は、弁護士から示された口座に銀行振込で支払うのが一般的です。
6 弁護士が仕事に着手する
委任契約の締結が完了し、(費用が先払いの場合は)弁護士費用の振込が確認されたら、弁護士が仕事に着手します。
相続放棄の依頼の場合、弁護士は依頼者から聴取した情報をもとに必要となる戸籍謄本等を取得したり、相続放棄申述書を作成したりします。依頼者が希望する場合には、相続財産の調査等を行うこともあります。
家庭裁判所とのやりとりも弁護士が行いますので、この間、依頼者がやることは特にありません。もちろん、依頼者が裁判所等に行く必要もありません。
7 相続放棄照会書への回答
弁護士が相続放棄申述書及び添付書類を家庭裁判所に提出すると、しばらくしてから、家庭裁判所から「相続放棄照会書(回答書)」と呼ばれる書面が届きます。
この書面は、相続放棄が本人の意思で行われているのかなどを確認するものです。
上記の趣旨からか、弁護士が代理人としてついている場合であっても、あえて申述人本人に送付する裁判所もあるようです。その場合はご自身で回答書に記入して裁判所に返送します。わからないことがあれば依頼した弁護士に聞きましょう。
8 委任契約の終了
相続放棄が完了すると、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。弁護士が代理人としてついている場合、この相続放棄申述受理通知書は法律事務所に送られてきます。
家庭裁判所から届いた相続放棄申述受理通知書の原本等を弁護士から返してもらったら、弁護士の業務は終了となります。
相続放棄申述受理証明書(上記の通知書とは異なる書類です。)の取得や被相続人の債権者への通知や等も弁護士が行う契約となっている場合は、それらの業務が完了した時点で弁護士の業務が終了します。
弁護士が担当する業務が全て終了すると、弁護士との委任契約は終了します。
9 依頼者がやること
ここまでの流れを見ればわかるように、法律事務所に直接赴いて相談する必要が特になければ、依頼者が法律事務所に行く必要はありませんし、依頼者が家庭裁判所に出頭する必要もありません。
この場合、依頼者がやることといえば、電話での初回の相談、契約書への署名押印、弁護士から質問されたことに答えることくらいです。
場合によって、相続放棄照会書への回答を行うこともありますが、チェックボックスにチェックを入れるような簡単な書面ですので、大変な作業ではありません。
このように、弁護士に依頼すると、手続きを全て自分でやるよりも負担が大幅に軽減されます。
10 相続放棄が完了するまでの期間
弁護士と委任契約を締結してから、相続放棄が完了するまでの期間は、1ヶ月〜2ヶ月程度です。
もちろん、相続財産の調査も依頼するのか、取得する戸籍謄本の量が多いかなど、個別の案件の内容によって要する期間は異なります。
11 弁護士に依頼するタイミンは早い方が良い
「弁護士に依頼するタイミングはいつが良いの?」と疑問に思う方も多いと思いますが、結論としては、「早ければ早いほど良い」ということになります。
というのも、法律事務所によっては、依頼された仕事の難易度によって弁護士費用を変動させることがあります。
相続放棄には、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に行わなければならないという期間制限があります。
この期間が残り少なくなっている場合や、既に3ヶ月が経過してしまっているケースでは、仕事の難易度が上がってしまいますので、弁護士費用が高くなる傾向があります。
たとえば、法律事務所によっては、
- 残されている熟慮期間が1ヶ月を切っている場合は●万円
- 相続発生から3ヶ月以上が経過している場合は●万円
というように、残されている期間に応じて費用が加算される費用体系を採用していることもあります。
このように、相続放棄が成功する確率が低くなってしまうだけでなく、弁護士費用の負担が大きくなってしまうという意味でも、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談することをおすすめします。