連帯保証人は相続放棄できない?相続放棄をしても連帯保証債務・借金が残る事例に注意

元弁護士

山内 英一

相続放棄と連帯保証 相続放棄に関するコラム

自分が連帯保証人である場合や、亡くなった被相続人が誰かの連帯保証人であった場合などに、相続放棄をすれば連帯保証債務から免れることができるのでしょうか?

そんな疑問を解決するために、相続放棄と連帯保証人の問題について専門家がわかりやすく解説します。相続放棄をしても債務・借金が残るケースもあるので注意しましょう。

1. 相続放棄とは

相続放棄の効果

相続放棄とは、故人のプラスの財産だけでなく借金や負債などのマイナスの財産を含めたすべての財産を手放すための制度です。

本来相続人となる人が相続放棄を選択すると、故人の借金や負債を支払う責任を回避することができます。

相続放棄は、相続に直面したときに、故人のマイナスの財産が多いときや、特定の相続人に遺産を集中させたいときなどに利用されます。

なお、相続放棄をするには、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月」以内に家庭裁判所に放棄の申述をする必要があります(民法915条1項)。

2. 連帯保証人とは

連帯保証人とは、契約をした人(主債務者)がお金を払えなくなった時に、代わりに返済する義務を負う人のことです。

連帯保証契約とは、主債務者が債務を履行しない場合に、保証人が連帯責任を負う形でその債務を履行をすることを約束する契約のことです。

例えば、XさんがAさんに100万円を貸し、1年後に全て返すという約束をしたとします。

このとき、Aさんが1年後に返済できなかった場合には、Bさんが代わりに返済するという連帯保証契約を締結したとしましょう。

ここでいうXさんを「債権者」、Aさんを「主債務者」、Bさんを「連帯保証人」といいます。

主債務者の代わりに返済するという点では「保証人」と同じですが、連帯保証人は「連帯」という言葉がつくように、主債務者と同程度の責任が課せられている点に特徴があります。つまり、連帯保証人は、返済について、通常の保証人よりも大きな義務を負っていると言って良いでしょう。

連帯保証人になるには、契約書等の書面で連帯保証契約を締結する必要があります。

3. 相続人が被相続人の連帯保証人である場合

まずは、相続人が被相続人の連帯保証人である場合について説明します。被相続人が主債務者、相続人が連帯保証人というパターンです。

(1)相続放棄をしても支払いを回避できない

結論として、このケースでは、相続人は相続放棄をしても支払いを回避することはできません

なぜなら、相続放棄の対象となるのは被相続人が負っていた債務であるところ、連帯保証債務は相続人が独自に負っている債務であって、相続放棄の対象にはならないからです。相続放棄をしても連帯保証債務は残ってしまいます。

なお、中には、契約書の中に「債務者が死亡したときは、連帯保証人は期限の利益を喪失し、債務の全額を直ちに弁済しなければならない」というような条項があるケースもあります。

このようなケースでは、本来の返済期限が未到来であっても、債務者が死亡したことで直ちに全額の弁済を求められる、という事態も起こり得ますので注意が必要です。(なお、そもそもこのような契約が有効なのかという点については一つの争点となり得ます。)

(2)契約内容の再確認が必須

上記のように、被相続人が主債務者、相続人が連帯保証人というパターンでは、相続放棄をしても支払いを回避できません。

相続放棄をするか否かは、他の相続財産の中に、返済に充てられるものがありそうかどうかなど、財産全体をみながら決定していくことになるでしょう。

いずれにしても、連帯保証契約が本当に成立しているのかもしっかりと見直すべきです。自分では「連帯保証人になっている」と思っていても、正確には連帯保証契約の締結ではなかったり、連帯保証契約が法律に定められた要件を満たしていなかったりすることもあります。

まずは、主債務の契約書や、連帯保証契約書などを確認しましょう。契約内容を見てもよくわからない場合は弁護士に相談することをおすすめします。

4. 被相続人が第三者の連帯保証人だった場合

次に、被相続人が第三者の連帯保証人だった場合について説明します。第三者が主債務者、被相続人が連帯保証人で、被相続人の連帯保証債務を相続しそうというパターンです。

(1)連帯保証債務も相続されるのが原則

前提として、連帯保証人としての地位(連帯保証債務)も相続されるのが原則です。

相続の対象となる相続財産には、プラスの財産のみならず、借金や連帯保証債務などのマイナスの財産も含まれるためです。

相続放棄などの手続きをせず一定期間放置した場合には、通常通り相続したものとみなされます。被相続人が負っていた連帯保証債務が相続の対象であれば、そのまま債務を引き継ぐことになります。

なお、「身元保証の保証債務」など相続の対象とならない保証債務も存在しますので、被相続人が負っている保証債務の内容はよく確認してください。

(2)相続放棄をすれば連帯保証債務の支払いを免れる

被相続人の連帯保証債務を引き継ぎたくない場合には相続放棄を検討しましょう。相続放棄をすれば連帯保証債務の支払いを免れることができます

ただし、連帯保証債務のみ放棄して、他の相続財産を引き継ぐことはできません。相続放棄は0が100かの制度ですから、財産の一部だけを相続放棄することはできないのです。

そのため、被相続人が残した財産を全て調査した結果、連帯保証債務を含むマイナスの財産の合計金額よりも、プラスの財産の合計金額の方が大きいのであれば、あえて相続するのも一つの選択です。

相続放棄をする場合には、相続が開始されたことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に必要書類を提出する必要があります。

手続きを正確かつ迅速に進める自信がない方は、できるだけ早いタイミングで弁護士等の専門家に相談し、適切な手続きを行うことが重要です。

(3)被相続人が連帯保証人だったか調べる方法

連帯保証人に対して債務を履行するよう請求が行われるのは、主債務者が実際に債務不履行を起こした後であるケースがほとんどです。

したがって、生前から被相続人が連帯保証人としての責任を追及されていたなどの事情がない限り、被相続人が連帯保証人だったことに気がつかないこともあります。

つまり、相続時点では被相続人が連帯保証債務を負っていることに気づかず、債権者から請求をされて初めて被相続人が連帯保証債務を負っていたことに気がつくということもあり得るのです。

そうならないために、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月」以内に、被相続人が連帯保証債務を負っていたかどうかを調べる必要があります。

調べる際は、被相続人の自宅や事業所にある契約書類を調べることが先決です。なぜなら、連帯保証人となる際に連帯保証契約書等の書面が作成されているはずだからです。

連帯保証契約書以外にも、次のような方法で連帯保証債務の有無につながる手掛かりを得られることがあります。

  • 被相続人が使用していたPCやスマートフォンに保存されているファイルやメールを調べる
  • 被相続人宛の郵便物を確認する
  • 被相続人の預貯金の入出金履歴を取り寄せて、心当たりのない入出金を調べる
  • 被相続人との間で、事業に関して交流があった人に質問する
  • CIC、JICC、全国銀行協会といった信用情報機関に情報開示請求をする

5. 連帯保証債務が絡む相続放棄の注意点

(1)被相続人が事業者・経営者だった場合は注意が必要

被相続人が事業者や経営者だった場合には、銀行などの金融機関からの借り入れを担保するために、被相続人個人が会社の連帯保証人になっていることがあります。

したがって、相続時点で被相続人が連帯保証人として支払い請求を受けていなくても、会社が金融機関から借り入れを行なっていないかなどを確認し、合わせて被相続人が連帯保証債務を負っていないかどうか確認した方がよいでしょう。

主要な取引先(銀行や信用金庫)がある場合には、そちらに確認をしても良いでしょう。

(2)被相続人が連帯保証人だったことを知らずに単純承認した後、債権者から請求を受けたら

繰り返しになりますが、相続放棄をするには、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月」以内に家庭裁判所に放棄の申述をする必要があります(民法915条1項)。この期間を「熟慮期間」といいます。

熟慮期間内に相続放棄をしなかった場合、法律上「相続することを認めた」とみなされてしまい、原則として相続放棄ができなくなります(法定単純承認)。

熟慮期間の起算点は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」ですから、次のようなケースでも原則として相続放棄ができません。

ケース1


被相続人が誰かの連帯保証人になっていたことに気づかないまま相続(単純承認)してしまった。被相続人の死亡を知ってから3ヶ月以上が経過したある日、債権者から連帯保証債務の履行を請求された。

ただし、被相続人の死亡を知ってから3ヶ月以上が経過していたとしても、例外的に相続放棄が認められるケースもあります。

特に代表的な例については、裁判所のウェブサイトでも周知されています。

「相続放棄の申述は,相続人が相続開始の原因たる事実(被相続人が亡くなったこと)及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知ったときから3か月以内に行わなければなりません。ただし,相続財産が全くないと信じ,かつそのように信じたことに相当な理由があるときなどは,相続財産の全部又は一部の存在を認識したときから3か月以内に申述すれば,相続放棄の申述が受理されることもあります。

相続放棄の申述|裁判所HP


極めて例外的なケースではありますが、相続財産が全くないと思っていたのに、3ヶ月以上経った後になって被相続人が多額の債務を負っていたことが発覚した場合には、そこから3ヶ月以内であれば相続放棄が認められることもあるのです。

実際に、被相続人が死亡したことを知ってから1年以上が経過していたにもかかわらず、相続放棄が認められた裁判例なども存在します。

似たような状況にある方は、相続放棄が認められる可能性もありますので、弁護士に相談してみても良いでしょう。

(3)他の誰かに迷惑がかかることがある

被相続人が負っている債務(主債務)について、第三者が連帯保証人になっていたとします。このとき、相続人が相続放棄をしてしまうと、債権者は連帯保証人に支払いを求めることになるでしょう。

また、被相続人が負っていた連帯保証債務について、他にも連帯保証人がいたとします。このとき、相続人が相続放棄をしてしまうと、債権者は他の連帯保証人に支払いを求めることになるでしょう。

このように、自分が相続放棄をすることで、他の誰かが支払いの責任を負うこともあり得ます。もちろん、連帯保証には当然にそのようなリスクが含まれているものですし、相続放棄は法律上認められている権利に他なりませんので、過剰に気にする必要はありません。

しかし、絶対に迷惑をかけたくない人がいる場合などは、相続放棄をした後のことを確認しておくと良いでしょう。

6. まとめ

この記事では、連帯保証と相続放棄について解説しました。

まずは、相続人が被相続人の連帯保証人であるパターンなのか、被相続人が第三者の連帯保証人であるパターンなのか整理するのがポイントです。

その上で、相続財産全体の金額をみて、相続放棄をするか否かを決定していきましょう。

「相続放棄をすべきか否か相談したい」「被相続人の財産調査を任せたい」「相続放棄の手続きを任せたい」などとお考えの方は弁護士に相談してみましょう。

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