相続放棄の受理件数・利用件数は年々増加しており、2024年(令和6年)の相続放棄の受理件数は308,753件と過去最高を記録(参照:令和6年 司法統計年報 3家事編)。2023年(令和5年)と比較して約9.2%増加し、初めて年間30万件を超えました。
この記事では、相続放棄の件数の推移、却下される件数や比率、相続放棄の理由の典型例などについて詳しく解説します。
1. 相続放棄とは

相続放棄とは、亡くなった人(被相続人)の財産を一切受け継がないことを選択する手続きのことです。
通常、遺産相続をすると、相続人は被相続人のプラスの財産とマイナスの財産を全て受け継ぎますが、相続放棄をすると、その全てを放棄することになります。
相続放棄は、主に、被相続人が負っていた負債を引き継がないために利用される制度です。
2. 相続放棄が受理される件数は年間約28万件
まずは、相続放棄が年間でどのくらい受理されているのか、その件数と推移を見てみましょう。
| 年度 | 相続放棄(受理件数) | 死者数 |
|---|---|---|
| 2016年(平成28年) | 197,656件 | 1,307,748人 |
| 2017年(平成29年) | 205,909件 | 1,340,397人 |
| 2018年(平成30年) | 215,320件 | 1,362,470人 |
| 2019年(令和元年) | 225,416件 | 1,381,093人 |
| 2020年(令和2年) | 234,732件 | 1,372,755人 |
| 2021年(令和3年) | 251,994件 | 1,439,856人 |
| 2022年(令和4年) | 260,497件 | 1,569,050人 |
| 2023年(令和5年) | 282,785件 | 1,576,016人 |
| 2024年(令和6年) | 308,753件 | 1,605,298人 |
根拠となる資料[開く]
・令和4年 司法統計年報 3家事編
・令和5年 司法統計年報 3家事編
・令和6年 司法統計年報 3家事編
・平成 29 年(2017) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
・平成 30 年(2018) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
・令和元年(2019) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
・令和2年(2020) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
・令和3年(2021) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
・令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
・令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
・令和6年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
相続放棄の受理件数

2017年(平成29)以降、相続放棄の受理件数は年間20万件を超えるようになり、2021年には25万件を突破。そして、2024年(令和6年)の相続放棄の受理件数は308,753件と過去最高を記録(参照:令和6年 司法統計年報 3家事編)。2023年(令和5年)と比較して約9.2%増加し、初めて年間30万件を超えました。
「意外と多くの人が相続放棄をしているんだな・・・」と感じる方も多いのではないでしょうか。
3. 相続放棄の件数が増加している理由は?
相続放棄の件数が年々増加している要因としては、そもそも国内の死亡者数が増加傾向にあることが考えられます。
日本における日本人の死亡数

2024年(令和6年)の日本の死亡者数は160万5298人で、前年の157万6016人より2万9282人増加しています。
日本国内の高齢化が進み死亡者数(相続の発生数)が年々増えていくのであれば、それと比例するように、相続放棄の件数もしばらくは増加傾向が続くことが予想されます。
また、地方に売れない(あるいは適切に管理できない)空き家や土地などの不動産が増加していること、核家族化・少子高齢化の進行により故人と交流が少ない親族が相続人となるケースが発生しやすいことなども、相続放棄の件数が増加している理由の一つと考えられるでしょう。
4. 相続放棄を利用する理由・メリットは?
毎年たくさんの人が利用している相続放棄ですが、皆さんはどのような理由で相続放棄をしているのでしょうか。相続放棄をする理由の典型例は次のようなものです。
- 相続財産の負債が多かったから
- 一人の相続人に遺産を集中させたいから
- 生前に遺産以外のものを貰っていたから
- 他の相続人や親族と関わりたくないから
- 被相続人と疎遠または絶縁状態だから
なお、明治安田生命グループの研究機関である明治安田生活福祉研究所(現在の名称は「株式会社明治安田総合研究所」)が2015年に行った調査によると、「別の兄弟が家を継いだから」あるいは「別の兄弟が親の世話をしているから」といった理由で相続放棄をする人の割合が多いようです。
要するに、特定の相続人に遺産を集中させる目的での利用が多いということがわかります。
-1024x642.webp)
5. 相続放棄が却下される件数は年間約400件
では、相続放棄が却下された(申し立てられたものの、何らかの理由でそれが認められなかった)件数はどれくらいでしょうか。その件数と推移を見てみましょう。
| 年度 | 既済事件の総数 | 却下件数 | 却下率 |
| 2018年(平成30年) | 215,153件 | 509件 | 0.24% |
| 2019年(令和元年) | 222,924件 | 538件 | 0.24% |
| 2020年(令和2年) | 233,325件 | 426件 | 0.18% |
| 2021年(令和3年) | 252,181件 | 363件 | 0.14% |
| 2022年(令和4年) | 258,933件 | 400件 | 0.15% |
| 2023年(令和5年) | 281,681件 | 395件 | 0.14% |
| 2024年(令和6年) | 309,375件 | 402件 | 0.13% |
相続放棄が却下される件数は年間約400件で、ここ数年、却下率は0.15%程度を推移しています。
このように、相続放棄が受理されない確率は670件に1件程度であり、確率的には低めではありますが、油断は禁物です。
なぜなら、年間400件程度は継続的に却下されていることは無視できませんし、そもそも却下率に現れない失敗事例も存在するからです。
例えば、
- 熟慮期間が過ぎてしまったので申し立てるのを諦めた
- 処分行為をしてしまったので申し立てるのを諦めた
- 相続放棄の手続き自体は受理されたものの予想と異なる結論になってしまった(相続権の優先順位を正しく理解していなかった等)
といった失敗も考えられます。なお、具体的な失敗例については下記の記事で詳しく紹介しています。
6. 相続放棄と限定承認の件数を比較

ちなみに、あなたが相続人になったとき、相続放棄ではなく限定承認をすることも可能です。そこで、相続放棄と限定承認の年間の受理件数を比較してみましょう。
| 年度 | 限定承認(受理件数) | 相続放棄(受理件数) |
|---|---|---|
| 2016年(平成28年) | 753件 | 197,656件 |
| 2017年(平成29年) | 722件 | 205,909件 |
| 2018年(平成30年) | 709件 | 215,320件 |
| 2019年(令和元年) | 656件 | 225,416件 |
| 2020年(令和2年) | 675件 | 234,732件 |
| 2021年(令和3年) | 689件 | 251,994件 |
| 2022年(令和4年) | 696件 | 260,497件 |
| 2023年(令和5年) | 688件 | 282,785件 |
| 2024年(令和6年) | 690件 | 308,753件 |
限定承認の受理件数は年間700件程度であり、相続放棄と限定承認の受理件数を比較すると、相続放棄の方が圧倒的に多いことがわかります。
限定承認の受理件数が少ない要因としては、そもそも利用しようとする人が少ないことが挙げられます。限定承認の利用者が少ない要因としては、限定承認のメリットが活きるケースが限定的であることや、手続きが煩雑であることなどが考えられます。
7. 相続放棄は手続きが比較的簡単である
限定承認と比較すると相続放棄の手続きは簡単です。次のような点で利用しやすい手続きであることも、相続放棄の利用者数が多い要因となっているのではないでしょうか。
- 他の相続人の同意などは不要で、個人の意思に基づき単独で手続きを進められる。
- 必要書類を収集・作成して郵送で提出することができれば、家庭裁判所に出向く必要がない。
- 手続きそのものにかかる費用は数千円程度であり、1〜2ヶ月で手続きが完了する。
もちろん、相続放棄が認められるかどうかが微妙なケースや、必要書類が大量になってしまうケースなどもあるため、全てのケースで簡単に手続きができるわけではありません。
相続放棄の手続きの具体的な流れについては、下記の記事で詳しく解説しています。
8. 相続放棄の手続きは自分でもできる
相続放棄の手続きは自分で行うこともできます。相続放棄をする場合、基本的には次の3つの方法から自分に合う方法を選ぶことになるでしょう。
- 自分で手続きを進める
- 司法書士にサポートしてもらいながら進める
- 弁護士に手続きの代理を依頼する
自分でできるか否かは個人の能力や事案の難易度によって異なりますので、明確に線引きできるわけではありませんが、下記の記事で一応の目安を示しています。自分でやるのか、専門家に依頼するのか迷っている方はぜひ参考にしてください。
9. 不安がある方は弁護士等の専門家に依頼すると安心
相続放棄や限定承認は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」にしなければならなりません。この限られた期間を「熟慮期間」といいます。
熟慮期間を経過してしまった場合、原則として相続放棄や限定承認をすることはできません(法定単純承認)。
期限内に、正確かつ迅速に必要書類を用意するのは想像以上に大変な作業です。より確実に手続きを進めたい方は弁護士等の専門家に依頼することをおすすめします。









